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      第 31話 
         
           
         
蛇島(じゃじま)  
長崎県佐世保市の民話 → 長崎県情報  
       むかしむかし、長崎県佐世保(させぼ)の殿さま、但馬守(たじまのかみ)にとても美しいお姫さまがいました。 
         
 ある日の事、相浦(あいのうら)の殿さまの松浦守(まつらのかみ)が、えぼし岳に狩りに行った帰りに佐世保のお城に立ち寄りました。 
「おお、良く来てくれた」 
 但馬守は酒盛りを開いて、自慢の姫さまに舞を舞わせて松浦守をもてなしました。 
 すると松浦守は美しい姫を好きになり、嫁にほしいと言い出したのです。 
 しかし姫には、すでに赤崎伊予守(あかさきいよのかみ)と言う許嫁(いいなづけ)がいたので、但馬守はこの申し出を断わりました。  
 すると松浦守は断わられた事に腹を立てて、自分の国に帰るやいなや大軍を集めて佐世保に夜うちをかけたのです。 
 但馬守は勇敢に戦いましたが、相手はこちらの三倍の大軍です。 
 城は落とされて、但馬守は討ち死にしてしまいました。  
「さて、姫をもらうとしよう」  
 松浦守は姫を探しましたが、どこを探しても姫はいません。  
 そこで松浦守は、家来たちにこう命令しました。  
「姫を見つけた者には、ほうびを取らす。出世も約束する」  
 するとそのうち、将冠岳(しょうかんだけ)の方へ逃げていく姫を見たという者が出てきました。 
 松浦守はさっそく兵を連れて、将冠岳へと登って行きました。 
 
 やがて山の中ほどまでやってきたとき、黒い大きな岩穴がぽっかりと口を開いているのを見つけたのです。  
 不思議に思った家来が中をのぞいてみると、穴の中から一匹の白い大蛇が火の様に赤い舌を出しながら現れたのです。  
 大蛇はものすごい早さで山をかけおりると、海に入りました。  
 そしてそのまま海を泳ぎきると、赤崎(あかざき)の前の浜に近い小島にたどりついたのです。 
 
 お姫さまの行方はとうとうわかりませんでしたが、あの白い大蛇を見たものは一人残らず気が狂って死んでしまいました。  
 それ以来、白い大蛇が泳いでたどりついた島を『蛇島(じゃじま)』とよび、誰一人近づかなかったと言われています。 
 
 現在この島は、陸続きになっているそうです。  
      おしまい 
           
             
         
          
          
       
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