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      第 41話 
         
          
         
お坊さんになった侍 
千葉県の民話 → 千葉県情報 
      
       むかしむかし、鳥を捕まえて暮らしを立てている貧乏侍がいました。 
 侍が今日も鳥を捕まえに行くと、池には仲良く泳いでいるオシドリの夫婦がいたのです。 
「よし、今日の獲物は、あのオシドリにしよう」 
 侍は弓矢をかまえると、見事にオスのオシドリを仕留めたのです。 
 そして侍は、そのオシドリを土間に吊すと、 
「明日になったら、料理をして食べよう」 
と、その日はお酒を飲んで、寝てしまいました。 
 すると夢の中にとても美しい女の人が現われて、涙を流しながらこう言ったのです。 
「なぜ、わたしの夫を殺したのですか?」 
「えっ? わたしは誰も殺していませんよ。あなたは誰ですか?」 
「昨日、夫を弓矢で射殺された者です」 
 
 さて、目覚めた侍が、昨日仕留めたオシドリを料理しようと土間へ行くと、吊していたはずのオシドリが地面に落ちていて、そのオシドリに体を寄せ合うように、取った覚えのないメスのオシドリが死んでいたのです。 
 それを見て、侍は昨日見た夢の事を思い出しました。 
「そうか。昨日の夢に出てきた美しい人は、このオシドリの妻だったのか」 
 オシドリの夫婦愛に心を打たれた侍は、二匹のオシドリにお墓を作ってやると、そのままお寺に行って、お坊さんになったそうです。  
      おしまい 
           
             
         
          
          
       
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