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第 59話

磯葛島の大蛇

磯葛島の大蛇
京都府の民話京都府の情報

 京都府舞鶴市に、磯葛島(いそかつらじま)と言う無人島があります。
 この島には一日に二回行くと不吉な事が起こり、生きて帰れなくなるとの言い伝えがありました。

 小橋村(おばせむら)では村祭りの日に村の庄屋が神主として、家に伝わる二つの神器「ヤナギのまな板」と「金のまな箸」を使って、磯葛島の葛嶋神社(かつらじまじんじゃ)の神さまに海の幸を届ける事になっています。

 村祭りの日、村の庄屋が旅から帰るのが遅れて、祭りに間に合わなくなりました。
 そこで庄屋の息子が村人たちと一緒に船に乗り、神器をささげて磯葛島へと向かったのです。
 やがて島に着き、祭りの儀式も無事に終わった村人たちは、島の浜辺で宴会を始めました。
「今日の神主は、立派だった」
「ああ、庄屋さんに勝るとも劣らん」
 村人たちは、神主を立派に務めた息子を褒めました。
「さあ、そろそろ帰ろうか」
 ところが村人たちに褒められて気分が良くなった息子は、うっかり祭りに使った大事な神器を島に置き忘れてしまったのです。
 せっかく祭りを成功させたのに、神器を忘れたとあっては庄屋さんに怒られてしまいます。
 同じ日に二度も島へ行ってはいけないという言い伝えは知っていましたが、ただの言い伝えだと思った息子は再び島へ向かい、葛嶋神社に置き忘れていた神器を持って船に乗ったのです。
 そして船が島を離れようとしたとき、急に雷鳴がとどろくと海の中から大蛇が現れました。
 大蛇は船に乗った息子をにらみつけると大波を起こして、息子の乗った船を息子もろとも海に沈めたのです。
「ああ、なんという事じゃ」
「やはり、言い伝えは本当だったのか」
 その様子を見ていた村人たちは言い伝えを恐れて、磯葛島へのお参りを止めてしまいました。

 それから数十年の後、人が行かなくなって磯葛島の社が朽ち果てた事を、大蛇のたたりがようやくおさまったと考えた村人たちは、村の氏神さまの隣に新しい社を建て直したとの事です。

おしまい

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