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第 64話

生き返った息子

生き返った息子
百物語

 むかしむかし、ある長者の息子が病気で亡くなりました。
 息子の為に立派な葬式を出した長者が、息子のお墓に手を合わせたその時です。
「ううっ、ううっー」
 お墓の中から、人の声が聞こえてきたのです。
「まっ、まさか!」
 みんなは慌てて、息子のお墓を掘り返しました。
 そして掘り出した棺桶を開けてみると、何と死んだはずの息子が息をしていたのです。
「息子が生き返った!」
 長者は大喜びで、息子を屋敷に連れて帰りました。

 次の朝、目を覚ました息子が長者に言いました。
「ここは、どこですか? あなたは、長者様ですか? 長者様、どうかわたしを家に帰してください」
 長者は息子の言葉にびっくりしましたが、息子を優しく抱きしめると言いました。
「お前は生き返ったばかりで、頭が混乱しているのだ。心配せずとも、そのうちに思い出すだろう」
「いいえ、長者様。わたしはこの家の息子ではありません。近くの村の者です」
「何を馬鹿な。お前の顔や姿は、確かにわしの息子だ。お前が葬式の後に生き返った事を大勢の者が見ている」
「でも本当に、わたしはこの家の息子ではありません」
「いいや、お前はわしの息子だ。ただ、混乱しているだけだ」
 でも長者は念の為に、息子が言っていた村に使いをやって調べてみました。
 するとちょうど長者の息子が亡くなった日に、息子を亡くなった家があったのです。
 長者はその息子を亡くした家の主人に、自分の息子に会って欲しいと伝えました。
 その家の主人が長者の息子を自分の息子ではないと言えば、息子が本当の記憶を取り戻すと思ったからです。
「分かりました。長者様の息子とやらにお会いしてみましょう。でもわたしは息子を火葬にしたので、万に一つも生き返る事はないと思いますが」
 そう言って息子を亡くした家の主人が、長者の屋敷へとやって来ました。
 そして主人は、息子の顔を見るなり言いました。
「長者様、やはりわたしの息子ではありません。わたしの息子とは、全くの別人です」
 ところが息子の方は、主人を見ると目に涙を浮かべて言いました。
「お父さん! 何を言っているのですか。早くわたしを家に連れて帰ってください」
「いいえ、わたしはあなたの父親ではありません。わたしの死んだ息子とは、顔も声も違います」
「でも本当に、わたしはお父さんの息子です」
 そう言って息子は、両親の名前から家の様子、子供の頃の思い出などを詳しく話しました。
 息子の話は、全てが当たっていました。
 そのやりとりを聞いていた、長者の父親が言いました。
「どうやらわしの孫と、この人の息子さんが入れ替わったようだな」
「入れ替わった?」
「そうじゃ。火葬にされた息子さんは、何かの形で魂が生き返ったのじゃ。でも火葬にされたので、生き返る体がない。そこで同じ日に死んだわしの孫の体で生き返ったのだ。だから、息子の体はわしの孫で、魂はこの人の息子さんという事になる」
「そうだったのか」
 長者も主人も納得しました。
 そこで両方の家で相談をした結果、息子が帰りたい家に帰るのが一番という事になり、息子の望み通り、息子は主人の家に帰る事になりました。
 そしてそれから両方の家は親戚の様に付き合い、息子も長者の屋敷へ遊びに来る様になりました。

 しかし二年後、息子は再び死んでしまい、もう二度と生き返る事はありませんでした。

おしまい

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