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第 366話

カッパの手

カッパの手
長崎県の民話
長崎県情報

 雲仙(うんぜん)は、そのむかし、温泉(うんぜん)と書いていたそうです。
 この温泉の山を開いたのは、行基(ぎょうき)という有名なお坊さんで、大宝元年(七〇一)に温泉山大乗院満明寺(おんぜんじだいじょういんまんみょうじ)を建てたのが始まりだとされています。
 満明寺は島原の乱で焼かれてしまいましたが、今の古湯の雲仙神社(うんぜんじんじゃ)の前にある釈迦堂(しゃかどう)が、当時をしのぶたった一つのお堂として残っています。
 さて、その釈迦堂の上の宝物館(ほうもつかん)に、世にも不思議な『カッパの手』というものがおさめられていて、こんな話が語り伝えられているのです。

 むかし、満明寺(まんみょうじ)が栄えていたころ、寺には赤峰法印(せきほうほういん)という偉いお坊さんが住んでいました。
 ところが、山の中腹あたりにある諏訪(すわ)の池には、悪いカッパの大将がいて、手下どもを集めては湯の町に現れて、女や子どもにいたずらをしたり、ふもとの小浜(おはま)まで行っては、漁師の大切なアミを破ったりと、悪い事ばかりしていたのです。
「これは困った。何とかして、カッパの大将をこらしめねばならぬ」
 こう思った赤峰法印は、カッパの大将に戦いをいどむ事にしたのです。
 カッパの神通力(じんつうりき→超能力)と赤峰法印の仏力(ほうりき→仏さまの力)の二つがぶつかり、どちらも死力をつくして戦いました。
 ところが両者の力は互角で、三日三晩たっても勝負がつきません。
 たまりかねた赤峰法印は、負けたふりをして山へ逃げたのです。
「まて、逃がさぬぞ!」
 勝ったと思ったカッパの大将は、赤峰法印をどんどん追いかけていきました。
 そしてとうとう、地獄道(じごくみち)にさしかかった時の事。
 もうもうと湧きのぼる地獄の煙と熱気で、カッパの頭の皿の水が蒸発してしまったのです。
「しっ、しまった! 大切な皿の水が・・・」
 皿の水がなくなったカッパの大将は神通力を失って、そのままバッタリと倒れてしまいました。
 こうして赤峰法印が退治したカッパの手が、今も宝物館におさめられているそうです。

おしまい

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