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第147話

水女

水女
ロシア・タタール地方の昔話 → ロシアの情報

 むかしむかし、ロシアのある森の中をきれいな川が流れており、その川でキジルという男の子が水浴びをしていました。
「さあ、そろそろ家に帰らないと」
 キジルがふと向こうの丸木橋をながめると、丸木橋に恐ろしい顔をした女が一人で腰掛けていました。
 その女は長い髪の毛を、金のくしでとかしています。
 その金のくしが日の光を反射して、キラキラとかがやいて見えました。
 やがて髪の毛をとかし終えた女は橋の上に立ち上がると、
 ザブン!
と、水に飛び込みました。
 そしてそれきり、女は浮かんではきませんでした。
「あれはきっと、水の底に住んでいる水女だ」
 怖くなったキジルは急いで川から逃げようとしましたが、ふと見ると、丸木橋の上にはさっきの金のくしが置いてあったのです。
「すごい。これはきっと、高く売れるぞ」
 キジルは丸木橋に近づくと、金のくしをポケットにしまって一目散にかけ出しました。
 走って走って森を抜け出した時、森の中から声が聞こえました。
「くしを返せー!」
 水女が、後を追って来たのです。
「わあ、捕まったら大変だー!」
 キジルは自分の村を目指して、懸命に走り続けました。
 やがて水女の声は、すぐ近くまでせまって来ました。
「くしを返せー!!」
 キジルは水女に捕まりそうになりましたが、村に近づくと村から犬が飛び出して来て、
「ワンワン! ワンワン!」
と、水女に飛びかかっていったのです。
「うひゃー、犬だー!」
 水女は犬が苦手なのか、どこかへ消えてしまいました。

 キジルは急いで家に帰ると、今日の出来事をお母さんに話しました。
「こうしてぼくは、この金のくしを手に入れたんだよ」
 ところが喜ぶかと思ったお母さんが、心配そうな顔で言いました。
「お前、どうしてそんな物を持って来たんだい? そんな事をすれば、水女にひどい目にあうかもしれないよ」
「平気さ。だって水女は、犬が苦手なんだ。この村に犬がいる限り、大丈夫だよ」

 その夜、キジルが寝ていると、
 コンコン、コンコン。
と、誰かが窓ガラスを叩きました。
「誰だろう? こんな時間に」
 キジルは暗い窓の外を見ましたが、外には誰もいません。
「おかしいな?」
 キジルはふとんにもぐり込むと、また眠りました。
 するとまた、
 コンコン、コンコン。
と、誰かが窓ガラスを叩きました。
  その音にお母さんは目を覚ますと、外に声をかけました。
「どなた? 何のご用ですか?」
 すると窓の外から、不気味な声がしました。
「わたしは、水女だ。わたしのくしを、返せ!」
 窓の外を良く見ると、水女の濡れた髪の毛が銀色に光っていました。
「くしを返せ! わたしの金のくしを返せ! お前の息子が盗んで行った! 早く返せ! 返せ!」
 びっくりしたお母さんは、急いでキジルを起こしました。
「キジル! くしを! 早く、くしをお出し!」
「う、うーん。お母さん、どうしたの? ・・・あっ!」
 窓の外を見てびっくりしたキジルは、引き出しに隠しておいたくしをお母さんに渡しました。
 お母さんは急いで窓を開けると、金のくしを外に放り投げました。
「おおっ、わたしのくしだ! わたしの大切なくしだ!」
 水女は大事そうにくしを拾い上げると、暗闇の中に消えてしまいました。
 キジルとお母さんは顔を見合わせて、思わずほっとためいきをつきました。
「キジル。人の物を盗んだりするとどうなるか、これでわかったね」
「うん。ごめんなさい。もうしないよ」
 キジルは震えながら、そう答えました。

おしまい

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