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第162話

カメの恩返し

カメの恩返し
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 むかしむかし、ある山奥の村に、ボク・シュリイという親孝行な娘がいました。
 母親は早くに死んでしまったので、シュリイは貧しいお百姓のお父さんと二人で暮らしていました。

 ある日の事、シュリイが食事の支度をしていると、どこからか大きなカメが現れました。
「娘さん、どうか食べ物をめぐんでください」
「まあ、ひどくお腹が空いているようね。ちょっと待っていてね」
 シュリイはお米を一握りつかむと、カメに食べさせてやりました。
 その日からカメは台所に住み着く様になり、シュリイがやさしくめんどうをみたのでカメはますます大きくなりました。

 それから何年か過ぎたある日、シュリイのお父さんが病気になりました。
 シュリイが一生懸命に看病をしても、お父さんの病気は少しもよくなりません。
 そこでシュリイは隣村の医者に、お父さんの病気を診てもらいました。
「どうぞ、父を助けてください」
 すると、医者が言いました。
「この病気は、薬を飲むとすぐに良くなる。しかしその薬は、とても高いんだよ」
「あの、おいくらでしょうか?」
 金額を聞いたシュリイは、涙を流して悲しみました。
 なぜなら、住んでいる家も着ている服も何もかも全部売っても、その半分にもならないからです。

 さて、近くの村には、怪物の住む家がありました。
 村では毎年、この怪物に人間をいけにえに捧げていました。
 いけにえを捧げないと、村に災難が起きると言い伝えられているからです。
 そして、いけにえになる人には、村からたくさんのお金がもらえるのです。
 この話を聞いたシュリイは、自分がいけにえになる事を決めました。
「わたしがけにえになれば、お父さんに薬を買ってあげられるもの」
 さっそくその村へ出かけたシュリイは、自分が次のいけにえになる事を申し出ました。
 そして村からたくさんのお金をもらったシュリイは、帰りに医者の所へ寄って薬を買いました。
 うれしい事に薬を飲んだお父さんはすぐに元気になり、やがて畑仕事も出来るほどになったのです。
 でもシュリイは、喜んでばかりはいられません。
 ついにシュリイが、いけにえになる日が来たです。
 シュリイは家の中を片付けると、父親に言いました。
「お父さん。わたし、ちょっと出かけてきます」
 シュリイの様子がいつもと違う事に気づいた父親は、シュリイに尋ねました。
「どこへ行くのだい? 明日では駄目なのかい?」
「はい。どうしても、今日行かないといけないのです」
「そうか。では、早く帰っておいで」
「・・・はい、お父さん」
 シュリイは涙を隠すと、台所へ行ってカメに言いました。
「カメさん。わたしはもう、あなたの世話が出来ないの。元気で暮らしてね」

 それから怪物のいる村へ行ったシュリイは待っていた村人たちに怪物の家に入れられると、外から戸を閉められてしまいました。
「わたし、どうなるのかしら?」
 シュリイが恐ろしさに震えていると、何かが部屋のすみで動きました。
「あっ、カメさん。カメさんじゃないの」
 いつの間についてきたのか、シュリイの可愛がっていたカメがいたのです。
 カメは鋭い目で天井を見上げると、口から天井へ黄色い息をシュッと吹きかけました。
 すると天井から青い息が、シュッと下りてきました。
 黄色い息と青い息が闘っているのが、シュリイにはわかりました。
「カメさん、がんばって!」
 やがてカメの黄色い息が青い息を押し返すと、黄色い息が天井を打ち破りました。
 その瞬間、
  ドドドドーン!
と、天井裏から、大きな大きなカニが落ちてきたのです。
 この村の化け物の正体は、この大きな大きなカニだったのです。
 やがて騒ぎを聞きつけた村人たちが家の中に入ってくると部屋のすみで気を失ったシュリイが倒れており、部屋の真ん中では仰向けにひっくり返って死んだ化け物ガニと、化け物ガニと戦って死んだカメが横たわっていたのです。
「これは、どうした事だ?!」
 村人がシュリイを抱き起こすと、気を失っていたシュリイが目を覚ましました。
 そしてシュリイから事情を聞いた村人たちは、化け物ガニと戦って死んだカメを手厚く葬ったという事です。

おしまい

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