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第180話

かしこい大臣

かしこい大臣のとんち
韓国の昔話大韓民国の情報

 むかしむかし、ある国に、とてもかしこい大臣がいました。
 どんなに偉い学者でも、このかしこい大臣にはかないません。

 ある日、大臣のかしこさを試してやろうと思った王さまは、かしこい大臣を使いに出して、残ったほかの大臣たちに言いました。
「明日の朝の集まりには、たまごを一つずつ持って来るように。でもこの事は、決して誰にも言ってはならないぞ」

 次の朝、集まった大臣たちに、王さまはニヤリと笑って言いました。
「わしが昨日に言いつけた物を出してもらおうか」
 それを聞いた大臣たちは、こっそりと持って来たたまごをいっせいに出しました。
 さあ、驚いたのはかしこい大臣です。
 昨日は使いに行っていたので、そんな言いは聞いていません。
 でもたまごを出さないと、王さまの言いつけにそむいたことになります。

 王さまは、大臣たちからたまごを受け取ると、かしこい大臣の方を見て言いました。
「おや? どうした? さあ、お前も早く、たまごを出しなさい」
「はい、今すぐにお出しします」
 そう答えたものの、たまごなんか持っていません。
(仕方がない、本当の事を言って謝ろう。・・・いや、これは王さまが、わたしの知恵を試そうとしているにちがいない。何とかうまい知恵を出さないと・・・)
 かしこい大臣は、だまって目をつむりました。

  それを見て、他の大臣たちが言いました。
「どうしました。早く出さないと、王さまにしかられますよ」
「もしかして、持って来るのを忘れたのではないですか?」
「かしこい大臣と言われるあなたが、まさか忘れ物をするとは」
 日頃から、かしこい大臣を嫌っている他の大臣たちは、この時とばかりに意地悪な事を言いました。
 すると、かしこい大臣はいきなり椅子の上に立ち上がると、両手を広げてニワトリの鳴き真似をしました。
「コケコッコー!」
 これには、 王さまも他の大臣たちもびっくりです。 
「どうしたんだ? 頭でもおかしくなったのか?」
「王さまの前でニワトリの真似をするなんて、とんでもない大臣だ」
 他の大臣たちが口々に言いましたが、それでもかしこい大臣はニワトリの鳴き真似を続きました。
「コケコッコー!」
 そしてしばらくすると、かしこい大臣は王さまの前に両手をついて言いました。
「王さま。残念ながら、わたしのニワトリはオンドリなので、たまごを生む事が出来ませんでした」
 そのとたん、王さまがニコニコして言いました。
「なるほど。やはりお前は、知恵のあるかしこい大臣じゃ」

 それから王さまはこのかしこい大臣を、とても大切にしたということです。

おしまい

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