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第220話

涙の重み

涙の重み
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 むかしむかし、あるお母さんに七歳になるとても可愛い男の子がいました。
 男の子の声は天使の歌声の様に美しく、男の子の笑顔は天使の微笑みの様に素敵な笑顔でした。
 お母さんは男の子の事を、世界中の誰よりも愛していました。
 でも男の子は、急な病気で亡くなってしまったのです。
 その時から、お母さんは昼も夜も泣いてばかりいました。

 男の子のお葬式が終った数日後の夜、お母さんが男の子の部屋で男の子が生きていた頃を思い出しながら泣いていると、どこからかスーッと死んだはずの男の子が現れたのです。
「おっ、お前、生き返ったんだね! 夢なら覚めないでおくれ! もうどこにも行かないでおくれ!」
 お母さんは男の子を抱きしめながら、一晩中泣き続けました。
 やがて朝になると、男の子は抱きしめるお母さんの腕の中からスーッと消えたのです。
 男の子が消えた後、お母さんは朝から晩まで泣き続けました。
 でも夜になると男の子はスーッと現れて、お母さんに抱きしめられながら朝まで何も言わずにお母さんが泣くのをじっと見ていました。
 そんな事が、何日も続きました。

 ある夜、いつも何も言わない男の子が、自分を抱きしめながら泣き続けるお母さんに言います。
「ねえ、お母さん。
 泣くのはもう、やめて下さい。
 でないと僕は、いつまでも空へ登る事が出来ないのです。
 だって、お母さんの涙が僕の服を濡らして、その重みで空へ飛び立てないのです」
「!!!」
 お母さんは、自分が泣く事で息子が成仏出来ないと知ってびっくりしました。
 そしてお母さんは、その時から息子の為に泣く事を我慢しました。
 夜に息子が現れても抱きしめたい気持ちを我慢して、息子と同じ様にじっと相手を見つめるだけでした。

 数日後の夜、息子がお母さんに言いました。
「お母さん、ごめんね。
 お母さんよりも、先に死んでしまって。
 そして悲しいのに、泣くのを我慢させてしまって。
 ・・・僕の服、ようやく乾いて軽くなりました。
 たから僕は、これから天に昇ります。
 お母さん、僕を産んでくれてありがとう。
 今まで育ててくれて、ありがとう」
 男の子はお母さんに最後のキスをすると、天国へと旅立ちました。

おしまい

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