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3月31日の日本の昔話

こまったむすこ

こまったむすこ

 むかしむかし、あるところに、せけんしらずの、こまったむすこがおりました。
 あるとき、むすこがにわの木にのぼっていると、おそうしきのぎょうれつがとおりました。
 むすこはそれを、木の上からながめています。
 すると親が飛んできて、むすこをしかりつけました。
「おそうしきの人たちがとおるときには、木からおりて、なむあみだぶつとおがむものだ」
 さて次の日。
 むすこが木にのぼっていると、今度は、お嫁入りのぎょうれつがとおりました。
 むすこは木からおりて、
「なむあみだぶつ」
と、おがみました。
 するとまた、これを親がみつけて、
「お嫁入りのぎょうれつのときには、おめでたいうたのひとつもうたうものじゃ!」
と、しかりつけました。
 また次の日。
 むすこがまちへいくと、火事があって、おおぜいさわいでいます。
 むすこはみんながさわいでいるので、これはおめでたいことだろうとおもって、おめでたいうたをうたいました。
 すると、
「ここは火事場だぞ。おめでたいうたなどうたうもんでねえ! 家をなくした人のみにもなってみろ」
 こっぴどくしかられて、ぼうでたたかれてしまいました。
 うちに帰って、むすこがわけをはなすと、
「そういうときには、水の一ぱいもかけてやるもんだ」
と、またまた、親にしかりつけられました。
 またまた次の日。
 むすこがまちへいくと、かじやがまっ赤に火をおこして、鉄(てつ)をとかしていました。
 むすこは火事かとおもって、水をぶっかけました。
「このやろう、なにするだ!」
 かじやはおこって、おいかけてきました。
 むすこがにげかえって、親にわけをはなすと、
「そういうときは、たたいて、手伝うもんだ」
 またまた、しかりつけられました。
 さらに次の日。
 むすこがまちへいくと、よっぱらいとよっぱらいが、ぼうをふりあげて、けんかをしていました。
 むすこはふたりが仕事をしているものとおもって、ぼうをふりあげ、よっぱらいをたたいたところ、ぎゃくにさんざんたたかれて、こぶだらけです。
 むすこがうちに帰って、わけをはなすと、
「けんかをみたら、とめるもんだ」
 またまた、しかられました。
 そのまた次の日。
 むすこがまちへいこうとすると、とちゅうで、ウシとウシがけんかをしていました。
「よし、今度こそ、ほめられよう」
 むすこはウシとウシの間に入って、けんめいにとめようとしましたが、ウシのツノでつかれて、大けがをしたということです。

おしまい

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