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2月9日の小話
おまけ
たいへんに、けちな、だんながおりました。
このだんなは、買い物はどんな物でも、値だんを引かせて買うことにきめています。
ある日のこと。
お店のこぞうに、
「いいか、うんとまけてもらって買ってくるのだぞ。けっしてむこうの売りねでは買うな。わかったな?」
と、何度念をおして、仏具屋(ぶつぐや)に、位牌(いはい→死んだ人につける名前を書いて仏壇にまつる木の札)を買いにいかせました。
やがて、帰って来たこぞうが、
「だんなさま。どうしても値だんは引けないと申しますので、おまけをつけてもらってきましたよ」
と、いいながら、だんなの前に、小さな箱をさし出しました。
「そうかそうか、それはお手がらだった。どれどれ、どんなおまけかな」
だんなが、ニコニコしながら、いそいで箱のふたをあけてみますと、おどろいたことには、中から、子ども用の小さな位牌が出てきたのです。
おどろいただんなは、目をつり上げて、
「この大バカ者めが! よぶんに位牌なんかをもらって来るやつがあるか! えんぎでもない!」
と、こっぴどくどなりつけました。
こぞうは、気にもとめずに、
「でも、だんなさま。大事にしまっておけば、坊ちゃまが死んだ時には、すぐに役にたつではありませんか」
おしまい