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4月30日の小話
ウマのしっぽ
子どもが、つないであるウマのしっぽを一本、むりやりひっこぬこうとしています。
それをみていた男が、
「これこれ、子ども。ウマのしっぽを、ぬいてはいかん」
「なぜだい、おじちゃん」
「そいつはな、わけがあるんだ」
「ぬいたって、どうもないよ」
「いいや、わけがあるから、ぬいちゃあだめだ」
「だからさ、そのわけってのは、何のことだよ」
「おまえなんぞがきいたって、わかんないことだから、ぬいちゃあだめだ」
「それでも、そのわけをいってくれなきゃ、ぬくよ」
「よせ」
「そんなら、なぜ」
「はてさて、こまった坊主だ。そんならおしえてやる。そいつは、ウマがいたがるからよ」
このような大人が、ときどきいます。
おしまい