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8月30日の日本民話
だまされたオオカミ
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むかしむかし、あるところに、とてもいじわるなオオカミがいました。
(ひまだなー。だれかいじめるやつはいないかなあー)
川のそばをプラプラ歩いていると、むこうからウサギがやってきました。
「やあ、ウサギどん。おらと一緒に遊ばないか?」
「・・・・・・」
ウサギがだまって通りすぎようとすると、オオカミはしつこくさそいます。
「川むこうの森に、すてきな花がさいているんだ。とりに行こうよ」
ウサギはしかたなく、オオカミについていくことにしました。
オオカミはさっそくかれ木を一本ひろってきて、川の上にかけました。
「さあ、ウサギどんから先にわたりなよ」
「だって、何だかおれそうだよ」
「大丈夫。ぼくだって平気なんだから」
「うん、じゃあ・・・」
ウサギはこわごわと、かれ木の橋をわたりはじめました。
ところが、橋のとちゅうまで行くと、
ポキッ!
かれ木の橋がおれて、ウサギはあっというまに川におちてしまいました。
「た、たすけてー!」
ウサギはもがきながら、どんどん流されていきます。
「あははははは。ざまあみろ」
オオカミは流されるウサギを見て、手をたたいて喜びました。
でも、川下へ流されたウサギは、うまいぐあいに岩につかまり、やっと川からはいあがることができました。
(オオカミめ! 見ていろよ! 必ずしかえしをしてやるからな!)
ウサギはオオカミに見つからないよう、こっそり家へ帰りました。
次の日の朝、オオカミがまだ寝ていると、
「オオカミどん! オオカミどん!」
と、戸をたたく者があります。
「うるさいなあ、だれだよ」
オオカミが戸を開けてみると、なんとウサギが立っているではありませんか。
「う、うっ、ウサギどん!」
オオカミはビックリです。
昨日、たしかに川でおぼれ死んだはずなのですから。
「ま、まさか幽霊(ゆうれい)?」
すると、ウサギが言いました。
「何をねぼけているんだい。この二本の足が見えないの? そうじゃなく、オオカミどんのおかげで竜宮(りゅうぐう)まで行ってきたんだよ」
「竜宮だって? もしかして、あの竜宮かい?」
オオカミが、身をのりだしてきました。
「そうさ。あれから川をどんどん流れていって海へついたら、大きなカメさんがやってきて、竜宮へ案内してくれたんだ。きれいな乙姫(おとひめ)さまと一緒にごちそうを食べて、魚たちのおどりも見せてもらった。そりゃ、もう楽しくて楽しくて」
それを聞くと、オオカミが待ちきれずに言いました。
「おらも、行きたい!」
「そうさ。だからこうやって、知らせに来たんじゃないか」
「ありがとう。でも、おらはおよげないよ」
「大丈夫、このふくろに入って流れていけば、一人でに海へ出られるさ」
「なるほど、そいつはありがたい」
ウサギはオオカミをつれて、川のそばにいきました。
それから大きなふくろの口を開けて、オオカミを中に押し込みます。
「ほらほら、まだしっぽが出ている。もっとおくへ」
オオカミはふくろのおくへもぐって、体をまるくしました。
「そんなら、ふくろの口をとじるよ」
ウサギはひもで、しっかりと口をとじました。
「苦しくて、息ができないよ」
オオカミが、ふくろの中から言いましたが、
「なに、大丈夫さ。すぐにカメさんが来てくれるから。じゃあ、乙姫さまに会ったらよろしくね」
ウサギは、力いっぱいふくろをけりました。
ふくろはゴロゴロところがり、川の中へどっぷん。
それから、プカリプカリと流れていきました。
でもそのうちに、水がしみこんできて、ふくろがしずみはじめました。
「く、く、苦しい。だれか助けて」
オオカミは、ふくろの中であばれまわりましたが、どうする事もできません。
(しまった、ウサギにだまされたんだ!)
と、思った時には、オオカミは川のそこにしずんでしまい、二度と浮き上がる事ができませんでした。
おしまい