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8月2日の世界の昔話
サルとボウシ屋
イギリスの昔話 → 国情報
むかしむかし、冷たい北風のなかを、ボウシ屋さんが山道を歩いていました。
町へ、ボウシを売りに行く途中でした。
「寒い、寒い。おまけに足もくたびれた。どれ、ひとやすみしていこう」
ボウシ屋さんは、がけ下の草むらに腰をおろしました。
そこは風もあたらず、あたたかいお日さまの光でポカポカしていました。
「やれ、たすかった」
ボウシ屋さんは、ボウシのいっぱいつまった袋をかかえて、日なたぼっこをしていましたが、そのうちにあんまりあたたかいので、コックリ、コックリとねてしまったのです。
ところが、しばらくして目をさましてみると、袋の口があいていて、中に入れてあったボウシが一つもありません。
「しまった。ぬすまれたか!」
と、あたりを見まわしたとたん、頭の上のほうから、キッ、キッと、サルの鳴き声が聞こえてきました。
ボウシ屋さんはビックリしました。
なんとがけの上で、たくさんのサルたちがボウシ屋さんのボウシをかぶって、飛んだりはねたりして、遊んでいるではありませんか。
ボウシ屋さんがひるねをしているあいだに、こっそり持ちだしたのにちがいありません。
「おーい、ボウシをかえせ。それはわしのたいせつな商売の品物だ」
ボウシ屋さんは、大声でどなりました。
でも、サルたちは知らん顔で、あいかわらず飛んだりはねたり。
「このイタズラザルどもめ!」
ボウシ屋さんは、カンカンになって、
「早くかえさないと、ひどい目にあわせるぞ!」
と、げんこつをふりあげました。
すると、サルたちもそのまねをして、げんこつをふりあげました。
「バカにするな!」
ボウシ屋さんはくやしがりましたが、でもそのとき、うまいことを思いつきました。
いきなり地面に両手をついて、クルリとさかだちをすると、
「どうだい。このまねができるか?」
と、いいました、
するとサルたちは得意になって、がけっぷちでさかだちをはじめましたが、かぶっていたボウシがぬげて、がけ下のボウシ屋さんの前に、ころげ落ちていきました。
「しめ、しめ」
ボウシ屋さんは、それを拾い集めて袋につめこみ、ボンヤリしているサルたちをしりめに、さっさと町のほうへ歩いていきました。
おしまい