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11月26日の世界の昔話
キツネのさいばん
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むかしむかし、ある森の中に、動物たちの国がありました。
動物たちの王さまは、ライオンです。
ある日、王さまの前に、いろいろな動物が集まりました。
クマ、オオカミ(→詳細)、シカ、リス、ウサギ、ネコ、イヌなどです。
「王さま。キツネをこらしめてください。とても悪いやつです」
「わたしはだまされて、おとし穴に落とされました」
「わたしの子どもは、足にけがをさせられました」
と、みんながキツネの悪いことをうったえました。
「うむ。けしからんキツネだ。よびつけて、こらしめてやろう」
キツネのすみかは、山の奥です。
王さまは、クマを使いにやりました。
「おい。王さまのよびだしだぞ。さあ、いこう!」
キツネはビックリしましたが、でも、笑い顔でいいました。
「クマくん。お使いをごくろうさん。したくをするあいだ、ハチミツを食べていてください。そこの木の穴に入っていますよ」
「ハッ、ハチミツ!」
クマは、ハチミツがだいすきです。
よろこんで、木の穴に首をつっこみました。
でも、ハチミツなどありません。
おまけに、首が穴からぬけなくなってしまいました。
大声でうなりながら、クマはやっと首を抜きました。
でも、顔も頭も傷だらけです。
フラフラになって、やっと帰りました。
「なに、だまされたって!」
おこった王さまは、こんどはネコを使いにだしました。
「やあ、ネコくん。ごくろうさん。したくをするあいだ、物置きのネズミを取ってくださいよ」
「ネッ、ネズミ!」
物置きに入ったネコは、キツネがしかけていたネズミとりに、足をはさまれてしまいました。
おまけに柱にぶつかって、顔にも大けがをしました。
「なにっ、また、だまされたって!」
三度めの使いは、タヌキです。
タヌキは、キツネのおじさんになります。
こんどは、キツネもおとなしくついてきました。
「こらっ、おまえは、けしからんやつだ。そんなやつは死刑だ!」
王さまがどなりつけると、キツネは泣きながら、
「王さま。わたしがわるうございました。どうか、死刑だけはお許しください。おわびに、わたしがいままで集めた宝物を、みんな王さまにさしあげます。その宝物は、うちのうら山の中にあります」
と、いいました。
「うーん。では、それがほんとうかうそか、調べてみよう」
王さまは、すぐにオオカミを宝物の山へ走らせました。
けれど、宝物などはありません。
王さまは、キツネをにらみつけました。
「いえ、王さま。待ってください。その宝物は、使いにいったオオカミが、途中でよそにかくしたのでしょう。きっとそうです!」
「な、なんだとっ、このうそつきギツネめ!」
おこったオオカミは、キバをむいてキツネにとびかかりました。
「待て、待て。では、オオカミとキツネと勝負をしろ。もしキツネが勝ったなら、いままでのことを許してやるとしよう」
オオカミとキツネでは、キツネに勝ち目はありません。
でも、こうなることを考えていたキツネは、ふといしっぽの中に、たくさんの砂をかくしていたのです。
さあ、いよいよ戦いです。
「ええい!」
「やあ!」
飛びかかって来るオオカミに、キツネは砂の入ったしっぽをうちつけました。
「あいた、目が見えない!」
目に砂が入ったオオカミは、その場にうずくまってしまいました。
いくらオオカミでも、目が見えなくてはどうしようもありません。
とうとうキツネに負けてしまいました。
「むむっ、しかたない。キツネよ、お前の勝ちだ」
約束ですから、王さまもキツネを許すほかありません。
キツネはゆうゆうと、自分の家に帰って行きました。
おしまい