6月1日のイソップ童話
やぶ医者
1人のやぶ医者が、病人をしんさつしました。
ほかの医者たちは、
「この病人はたいしたことはないけれど、すっかりなおるには時間がかかる」
と、いっていたのですが、このやぶ医者だけは、
「お気のどくだが、この病人は、あしたまで生きられませんな。覚悟をきめるほうがいいでしょう」
と、いって、かえっていきました。
それからしばらくたって、病人はおきられるようになり、まだ顔色は悪く、足もふらふらしていましたが、外に出ることができました。
ふらふらと歩いていますと、むこうから、いつかのやぶ医者がきました。
「やあ、こんにちは。地獄(じごく)の人たちは、ごきげんいかがですか」
と、やぶ医者は、あいさつしました。
すると病人は、すまして答えました。
「みんな、のんびりやっていますよ。ごぞんじのとおり、この世と地獄のあいだにある地獄の川の水を飲めば、なんでもわすれてしまいますからね。たださいきん、死神と、地獄の大王ハデスが、医者はけしからんと、ひどく腹を立てていました。『医者がいるおかげで、病人が死なないので、地獄が不景気になる』と、いうのですよ。それで死神たちは、ぜんぶの医者をやっつけようとして、医者という医者の名まえを、書きとめていました。あなたの名まえも書こうとしましたから、わたしは大いそぎで2人の神さまの前にひれふして、『この人は、本当の医者ではないから、助けてあげて下さい』と、お願いしたのですよ」
このお話しは、□先ばかりたっしゃで、病人をなおすことを知らない医者をやっつけています。
おしまい
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