きょうのイソップ童話
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11月11日のイソップ童話

キツネとハリネズミ

キツネとハリネズミ

 ギリシャのエーゲ海の島のサモスで、一人の政治家が死刑をいいわたされたときに、イソップがその命を助けようとして、こういう話をしました。
「キツネが川をわたろうとするときに、流されて、がけの岩のあいだにはさまりました。そこから出ることができず、長いあいだ苦しんでいますと、ダニがたくさんたかりました。そこへやってきたハリネズミが、それを見て気のどくにおもい、ダニをとってあげようかといいますと、キツネはとらずにおいてもらいたいといいました。ハリネズミがどうしてかと聞きますと、『こいつらは、わたしの血を、もう、たくさんのんだから、あとはたいして吸わないが、こいつらをとってしまうと、おなかのすいたべつのダニがきて、のこりの血をのんでしまうだろう』と、いいました」
 それからイソップは、言葉をつづけていいました。
「ところで諸君。この政治家は、この先、もう害をくわえません。なぜなら、金持ちになっているからです。ところが、諸君がこの人を殺せば、ほかの貧乏なやつがやってきて、諸君の国のお金をこっそりつかってしまいます」
 イソップの話しに感心した人たちは、その政治家をゆるしてやることにしました。

 権力を持った人は、まず自分のためにはたらき、自分がじゅうぶん力をつけて後で、人のためにはたらくことを、このお話しはおしえています。

おしまい

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