きょうの日本昔話
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1月17日の日本の昔話

大工と三毛猫

大工と三毛猫
東京都の民話

 むかしむかし、江戸の神田に一人の大工がいました。
 女房が死んで、とてもさびしかった大工は、一匹の三毛ネコを可愛がっていました。
 大工は毎朝、ネコのごはんを用意してから仕事に出かけます。
 そして夕方に仕事が終わると、ネコの大好きな魚をお土産に買って帰ります。
 ネコも大工の事が大好きで、大工の足音を聞くと、ちゃんと迎えに出るのでした。
 ところある時、この大工は目の病気になってしまいました。
 そこで、医者に診てもらうと、
「これはひどい眼病ですな。残念ですが、とてもわしらの力では治す事は出来ません」
と、言うのです。
 それからはあまり仕事が出来なくなり、大工はとても貧乏になりました。
 もちろん、ネコに魚を買ってやる事も出来ません。
 ある晩、大工はネコに向かって言いました。
「なあ、みけや。おれの目は白く濁る病気で、とても治りそうもない。仕事が出来ずに暮らしも悪くなり、このままではお前を養う事も出来んかもしれん。いったい、どうしたものかのう?」
 大工は語りかけているうちに、うとうとと、眠ってしまいました。
 するとネコは、その話がわかったかのように、
「ニャー」
と、小さく鳴くと、大工にすり寄って、大工の目をしきりに舐め始めたのです。
 右の目を舐めると、今度は左の目を舐めます。
 それに気づいた大工は、
(変な事をするわい)
と、思いましたが、目を舐められると、とても気持ちがいいので、ネコの好きなようにさせていました。
 それからというもの、ネコは暇さえあれば、大工の目を舐めてくれたのです。
 すると不思議な事に、大工の目の濁りは、だんだんと薄れてきました。
 そして十日ばかりたつと、大工の目はすっかり治って、両目ともとてもよく見えるようになったのです。
 ところがその頃からネコの目が白く濁っていき、ついにネコの目は見えなくなってしまったのです。
 でも、心配する事はありません。
 目の治った大工は目の見えなくなったネコを今まで以上に可愛がり、ネコは何不自由なく幸せに大工と暮らしたのでした。

おしまい

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