1月27日の日本の昔話
カニの甲羅の毛
鹿児島県の民話
むかしむかし、サルとカニが餅を作る事になりました。
「カニどん、おらが餅をついてやるから、カニどんは餅米を持って来てくれ」
カニは家から餅米を持ってくると、サルに渡しました。
「よしよし。ではカニどん、おらが餅をついてやるから、カニどんはこの餅米を蒸してくれ」
カニは言われた通り、餅米を蒸しました。
「よしよし、ではカニどん、おらが餅をついてやるから、餅をつく為のうすときねを持って来てくれ」
カニはうすときねを持っていなかったので、山へ行くと自慢のハサミで木を切り倒し、うすときねを作りました。
カニからうすときねを受け取ったサルは、やれやれと言うように首を横に振って、
「駄目駄目。うすは良いが、こんな曲がったきねじゃ、餅はつけんよ」
仕方なくカニはまた山へ行って、きねにぴったりの木を探しました。
さて、その間にサルは曲がったきねとうすで餅をつくと、その餅を持って柿の木に登ってしまいました。
やがてカニは真っ直ぐのきねを作って来ましたが、すでにサルは木の上でつきたての餅を食べようとしています。
「やあ、カニどん。残念だけど餅は全部頂くよ。欲しかったら、ここまで来てみなよ。まあ、カニの足ではここまで登れないだろうけどね。ウッキキキー」
木の上から馬鹿にするサルに腹を立てたカニは、持っていたきねでサルの登った柿の木を思いっきり叩きました。
ドーン!
するとその振動でサルはバランスを崩して、食べようとしていた餅を落としてしまったのです。
「しまった!」
サルが慌てて木から下りてみると、カニは餅をつかんで地面の穴の自分の家に持って行った後でした。
サルは、カニの家の戸を叩くと、
「悪かったカニどん。謝るから、おらにも餅を分けてくれよ」
「・・・・・・」
カニは餅をしっかりと掴んだまま、返事をしません。
「わかった。カニどんが前から欲しがっていた毛を一本やろう。毛が生えていると暖かいぞ」
「・・・・・・」
「じゃあ、毛を二本でどうだ?」
「・・・・・・」
「じゃあ、毛を三本だ」
なんともせこい交渉ですが、意外にもカニは納得したらしく、サルから毛を三本もらうと餅を半分にして、片方をサルに分けてあげました。
その時からです。
サルの毛がむかしより三本少なくなって、代わりにカニの甲羅に毛が生えるようになったのは。
おしまい
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