3月18日の日本の昔話
忠犬ハチ公
東京都の感動話
東京の渋谷駅の待ち合わせ場所の定番として、秋田犬ハチ公の銅像があります。
台の上にすわって、じっと駅の改札口を見ている犬の銅像です。
このお話しは、その銅像になったハチ公のお話しです。
むかし、ハチ公は、東京大学農学部の教授だった上野英三郎という博士の家の飼い犬で、子犬の時に博士の家にもらわれてきたのでした。
博士はハチ公を大変可愛がり、ハチ公も博士が大好きです。
博士が大学に出かけるとき、ハチ公は家の近くの渋谷の駅まで、毎日必ず博士のお供をするのです。
そして夕方になり、博士が帰ってくる時間になると、また駅へ博士を迎えに行くのです。
時々、博士が帰ってくるのが遅くなる日がありましたが、ハチ公はどんなに遅くなっても、必ず駅の前で待っているのです。
「ハチ公。こんな所にいては邪魔だよ」
駅の人に怒られる事もありましたが、ハチ公は吠えたり噛みついたりせず、博士が帰って来るのをおとなしく待っているのでした。
そんな平和な日々は、一年半ほど続きました。
でも、1925年5月21日、ハチ公に送られて大学へ行った博士が、突然倒れてしまったのです。
みんなはすぐに博士を手当てをしましたが、博士は助かりませんでした。
博士は死んでしまったのですが、ハチ公にはその事がわかりません。
ハチ公は夕方になると博士を迎えに駅までやって来て、そして博士を一晩中待って、朝になると家に帰り、また夕方になると博士を迎えに駅までやってくるのです。
そのハチ公の姿を見た人たちは、目に涙を浮かべました。
「ハチ公、かわいそうになあ」
「死んだ博士を、毎日待っているなんて」
こうして、帰ってこない博士をハチ公が迎えに行く日々が七年続いたとき、ハチ公の事が新聞にのりました。
すると、それを知った多くの人が、ハチ公を応援しました。
駅の人も、雨の降る日などは、ハチ公を駅の中で寝かせてあげました。
そしてとうとう、十年がすぎました。
すると、駅の人や近くの人が集まって、感心なハチ公の銅像をつくる相談をしました。
銅像が完成したのは、ハチ公が博士を待つようになってから十二年目の事です。
その頃ハチ公は、よぼよぼのお年寄りになっていました。
毎日毎日、弱った体で帰ってこない博士を迎えに行くのは大変な事です。
でもハチ公は、頑張って頑張って、博士を迎えに行きました。
そして、銅像が出来た次の年の1935年3月8日午前6時過ぎ、十三才になったハチ公は、帰ってこない博士を待ち続けたまま、自分の銅像の近くで、死んでしまったのです。
でも、悲しむことはありません。
天国へ行ったハチ公は、大好きな博士と一緒に暮らしているのですから。
おしまい
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