4月13日の日本の昔話
キツネのいたずら
三重県の民話
むかしむかし、松林の小高い丘に、人を化かすキツネが住んでいました。
ある秋祭りの夜、村人たちがお土産にもらった稲荷寿司を持って帰っていると、松林の辺りから、
「コンコン、コンコン」
と、キツネの鳴き声がしました。
「おや?」
村人たちが振り返った途端、持っていたちょうちんの明かりがすーっと消えて、また再びパッとつきました。
そして気がつくと、お土産の稲荷寿司が無くなっていたのです。
「キッ、キツネに化かされたー!」
村人たちはびっくりして、一目散に逃げ帰ったそうです。
また、ある村人はお祭りのごちそうを持って、お酒に酔いながらフラフラと松林を歩いていました。
すると見たことのない美しい女の人が現れて、
「おいで、おいで」
と、手招きをしているのです。
(うん? おれをよんでいるのか?)
村人が近寄ってみると、女の人はすぐ近くにある自分の家に村人を招き入れて、お風呂に入っていくようにと言うのです。
そこで村人は着物を脱ぐと、温かい湯船に体を沈めました。
「ぷはーっ、いい湯だー」
さて、いつまでたっても帰って来ないだんなを心配した村人の奥さんが、だんなを探しに行きました。
するとだんなは、山の道筋にある肥えだめに入って、
「ああ、いい湯だー。いい気持ちだー」
と、ニコニコしているのです。
「あっ、あんた!」
奥さんはあわててだんなを引き上げましたが、いつの間にか、お土産のごちそうがなくなっていたということです。
こうして多くの村人たちがキツネに化かされましたが、村人たちはキツネに怒ることなく、
「キツネがいたずらをするのは、きっと食べる物に困ったからだろう」
と、キツネのすみかに稲荷神社をたてて、キツネの好きな食べ物をお供えしました。
するとそれ以来、キツネに化かされる人はいなくなったそうです。
おしまい
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