4月27日の日本の昔話
赤ん坊と泥棒(どろぼう)
岡山県の民話
むかしむかし、泥棒(どろぼう)が、ある家の天井裏に忍び込みました。
下を見ると、お父さんとお母さんと赤ん坊がねむっています。
お父さんもお母さんも、ぐっすりです。
「しめしめ、よくねむっているぞ」
泥棒が安心して下へ降りようとすると、まん中にねていた赤ん坊がぱっちり目を開けました。
「しまった」
泥棒は、あわてて天井裏へもどりました。
すると赤ん坊が、今にも泣き出しそうな顔でこっちを見ています。
「弱ったぞ。こんなところで泣かれては大変だ」
泥棒は、ペロリと舌を出しました。
そのとたん、赤ん坊はにこっと笑いました。
「よしよし、いい子だ」
泥棒は口をとがらせて、ひょっとこのお面みたいな顔をしました。
赤ん坊はそれを見て、また笑いました。
「あはは。なんてかわいい赤ん坊だ」
泥棒はこの赤ん坊がすっかり気に入って、手を動かしたり、おもしろい顔をして見せたりと、仕事も忘れて赤ん坊をあやしていました。
そのうちに一番どりが鳴いて、あたりが明るくなってきました。
「しまった。夜があけてしまう」
泥棒は赤ん坊に手を振ると、何にも取らずに逃げていきました。
おしまい
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