5月28日の日本の昔話
でこ鼻、手長、足長
新潟県の民話
むかしむかし、あるところに、でこ鼻と、手長と、足長と言う、三人の男がいました。
でこ鼻は、とても大きな鼻をしています。
手長は、とても長い手をしています。
足長は、とても長い足をしています。
ある日の事、三人はお伊勢参りへ行くことになりました。
米山薬師の所まで来ると、三人は一休みをしました。
でこ鼻が、景色をながめながら言いました。
「ここは見晴らしが良くて、ええ気持ちだ。
何だか、酒でものみたいな。
おい、足長。
お前、ひとっ走り酒を買って来てくれや」
「はいよ」
足長は返事をすると、ただでさえ長い足をぐーーーんと伸ばして、長岡(ながおか)の町まで、たったの十歩で酒買いに行きました。
そして帰りも足をぐーーーんと伸ばして、たったの十歩で帰ってきました。
「おう、さすがに早いな。
さて、酒は手に入れたが、酒の肴がないな。
おい、手長。
お前、魚でも取ってくれんか」
「はいよ」
手長は返事をすると、ただでさえ長い手をぐーーーんと伸ばして、小千谷(おじや)の海で泳いでいた魚をひょいと取ってくれました。
「よし。これで、酒も肴も手に入ったぞ」
三人は酒をのんで魚を食べると、そのまま昼寝をはじめました。
さて、しばらくすると冷たい風が吹いてきました。
長い足が冷えた足長は、ぶるぶるふるえながら目を覚ましました。
「ううっ、寒いな。どこかに、風をよける場所は・・・」
足長は、でこ鼻の大きな大きな鼻の穴に気づきました。
「こうして見ると、でこ鼻の鼻は本当にでかいな。よし、ちょいと入らせてもらおう」
足長は、でこ鼻の鼻の中にどんどん入っていきました。
すると鼻がくすぐったくなったでこ鼻は、思わず大きなくしゃみをしました。
ハックショーーーン!
鼻が大きい分、でこ鼻のくしゃみは、もの凄い音です。
その音に目を覚ました手長が、でこ鼻にたずねました。
「おい! 今のはどうした!?」
「ああ、何かがおれの鼻の中で動き回っているんだ。・・・ハッ、ハッ、ハックショーー―ン!」
「よし、おれがさがしてやろう」
手長が長い手をでこ鼻の鼻の中に入れてみると、中にいた足長が面白がって手長の手をふみつけました。
「あいた! どうやら、中にいるのは足長だな。ひとつ呼んでみるか」
「ああ、そうしてくれ。どうにもこうにも、くすぐったくって、・・・ハックショーー―ン!」
手長が、でこ鼻の鼻の中に頭を入れて言いました。
「おーい、足長。お前、そんな所で何をしてるんだ?」
すると、足長が答えました。
「いま、煙草(たばこ)を刻(きざ)んどる所だ。一服したら、出て行くから」
それを聞いたでこ鼻は、びっくりして言いました。
「こらこら、おれの鼻の中で火を付けるな。手長、何とかしてくれ」
「何とかと、言われてもな。おーい、足長よ―、中で火をつけても大丈夫なのかー?」
すると中から、足長が答えました。
「大丈夫、大丈夫。煙草の火ぐらい、何でもないぞ。何しろでこ鼻の鼻の中には、千軒の町があるんだからな」
「千軒の町? おい、でこ鼻。足長があんな事を言っているが、本当か?」
「まさか。
自分の鼻の穴を見たことはないが、いくらおれの鼻がでっかいと言っても、そんなはずは」
「まあ、それもそうだな」
手長はうなづくと、足長に言いました。
「おーい、足長。いくら何でも、そんなうそを言うなよ」
「うそなものか。うそだと思うんだったら、お前の長い手で中の物を引っ張り出してみろや」
「よーし」
手長は両手をぐ―んと伸ばして、鼻の奥をさぐってみました。
すると確かに、何か大きな物が入っています。
そこで手長はこんしんの力を込めて、その大きな何かをずるずると引っ張り出してみました。
すると本当に、でこ鼻の鼻の穴から千軒の町が出て来たのです。
この鼻の穴から出てきた町が、今の柏崎(かしわざき)の町なのです。
おしまい
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