6月4日の日本の昔話
少女ギツネ
京都府の民話
むかしむかし、仁和寺(にんなじ)の東にある高陽川(こうようがわ)のほとりに、夕暮れ時になると、かわいらしい少女に化けたキツネが現われて、馬で京にむかう人に声をかけるという噂がたちました。
「どうぞ、私をお連れ下さいませ」
そう言って馬に乗せてもらうとすぐに姿を消して、乗せてもらった人をびっくりさせると言うのです。
ある日、一人の若者が、馬でその場所を通りかかりました。
そこへいつものように少女ギツネが現われて、若者に、
「そこのお馬の人、私をあなたさまの後ろへ乗せてはいただけませんでしょうか?」
と、声をかけました。
「ああっ、いいですよ」
若者はこころよく引き受けると、その少女を自分の馬に乗せてあげました。
ところがなんとそのすぐあとで、すでに用意していたらしいひもを取り出すと、その少女を馬の鞍(くら)にしばりつけてしまったのです。
「よし、これで逃げられまい」
実はこの若者は、その少女がキツネだという事を仲間から聞いて知っていたのです。
そしてそのいたずらギツネを捕まえてやると仲間に宣言して、こうしてやってきたのでした。
さて、その若者と少女ギツネが京にもどってきた頃には、日もとっぷりと暮れてきました。
西の大宮大路(おおみやおおじ)あたりまで来た時、たくさんのたいまつを灯した行列に出会ったので、若者は横道にそれてまわり道をして、仲間の待つ土御門(つちみかどもん)へと急ぎました。
若者の仲間たちは、たき火を囲んでいました。
「おお、約束通りキツネを捕まえてきたぞ。逃げられないように、みんなで取り囲んでくれ」
仲間たちが周りを取り囲んだのを見ると、若者は少女ギツネをしばっているひもを解いて放してやりました。
しかしそのとたん、狐も仲間のみんなも、すーっと消えてしまったのです。
「なに! ・・・しまった、たいまつの行列も仲間たちも偽物。おれはキツネに化かされてしまったのか!」
地団太ふんでくやしがった若者は、数日後、同じ場所へ出かけていき、少女ギツネを再び捕まえてきました。
そして今度こそはだまされないようにと注意しながら、本当の仲間の所へつれていき、みんなでさんざん少女ギツネをこらしめてから放してやりました。
それからしばらくたって、若者はその少女ギツネの事が妙に気にかかり、例の高陽川(こうようがわ)のほとりまで様子を見にいきました。
するとやっぱり、いつものようにあの少女ギツネが現われました。
でも着物はうすよごれ、顔色もよくありません。
そして、若者がやさしい言葉をかけても、
「どんなに乗せてもらいたくても、またこの前のように、こらしめられるのはこわいからいや」
と、言って、悲しそうな目で若者を見ると、しょんぼりと肩を落として姿を消し、二度と現われる事はなかったそうです。
おしまい
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