きょうの日本昔話
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7月3日の日本の昔話

すぎの木、百本

杉の木、百本
吉四六(きっちょむ)さん

 むかしむかし、吉四六さんと言う、とてもゆかいな人がいました。
 ある日の事、吉四六さんの村でお寺を建て直す事になり、世話人が寄付を集めに来ました。
「どうだろう、吉四六さん。吉四六さんがうんと出してくれれば、他のみんなだって、負けずに出してくれるはずだ。だから何とか、よろしく頼みますよ」
「いいとも。任せてくれ」
 吉四六さんは、世話人の持ってきた帳面に、
《杉の木、百本》
と、書きました。
「へえっ、杉の木を百本も寄付してくれるのか」
 世話人は大喜びで、庄屋さんの家に行きました。
「何! あのけちの吉四六さんが、杉の木を百本も寄付するだと!」
 庄屋さんは、びっくりして、
(庄屋のわしが、吉四六さんより少なくては恥ずかしいな)
と、思い、仕方なく、
《米、百俵》
と、書きました。
 それからも吉四六さんのおかげで、村のみんなは無理をして、たくさんのお金や持ち物を寄付する事になりました。

 さて、いよいよ寄付すると書いた物を、集める日がやって来ました。
 吉四六が杉の木を百本も寄付すると言うので、大勢の人が車をひいて吉四六さんの家へやって来ました。
「吉四六さん。杉の木を取りに来たが、ここには無いようだな。どこへ取りに行ったらいいんだい?」
 すると、吉四六さんは、
「いやいや、どこへも行かんでいい。ここで渡すから」
と、言って、杉の木のおはしを百本渡したそうです。

おしまい

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