7月7日の日本の昔話
イヌ飼い七夕
むかしむかし、一人のイヌ飼いがいました。
お気にいりのイヌを連れて、池のそばを通ると、イヌが急にほえるのです。
「いったいどうした! ・・・あっ!」
ふと見ると、美しい娘が、水あびをしているではありませんか。
「あれは、うわさに聞いた天女(てんにょ→詳細)だな。天女なら、きっとどこかに羽衣(はごろも→詳細)をぬいでいるぞ」
イヌ飼いは、イヌにいいました。
「そこらじゅう、かぎまわってさがし出せ」
しばらくして天女が池からあがってきましたが、羽衣が見つかりません。
イヌ飼いが、かくしていたのです。
羽衣がなければ、天へ戻れません。
天女は、こまってしまいました。
「・・・どうしたら、いいのだろう」
そこへ、イヌ飼いが現れてきて、
「おこまりのようだな。よければ、わしのうちにきなさらぬか?」
しかたありません。
天女はイヌ飼いの家にいきました。
そして、イヌ飼いの嫁になったのです。
ふたりは仲よく暮らして、あっというまに日がたちました。
ところがある日、嫁になった天女が、隠してあった羽衣を見つけてしまいました。
「あんまり、ひどい!」
天女は羽衣をつけると、空高く舞いあがっていきました。
「待っておくれ。いかないでおくれ」
イヌ飼いが声をはりあげましたが、天女は空の向こうへ消えて、二度と戻ってきませんでした。
それから毎日毎日、イヌ飼いは嫁の天女のことを思うと、仕事にも手がつきません。
「どうすれば、嫁を連れ戻せるか」
イヌ飼いは、うらないのおばあさんのところへ出かけていきました。
するとうらない師は、
「それはできないことだよ。だが、おまえの方から訪ねていけばいい」
うらない師は、天女のところヘいくには、一晩に百足のわらじ(→詳細)をつくらねば、といいました。
「それを土に埋めて、その上に、へちまの種をまくがいい」
イヌ飼いはその晩、てつ夜でわらじをつくりました。
でも、夜が明けたときには、九十九足しかできあがっていません。
「一足たりないけれど、百足とは、あまり変わるまい」
そして、うらない師のことばどおり、へちまをまくと、どうでしょう。
へちまのつるは、ドンドンドンドンのびて、今にも天に届きそうになりました。
「よし、おまえもついてこい」
イヌ飼いはイヌとともに、へちまのつるをのぼっていきました。
だけど、天女の嫁がいる天が、もう少しだというところで、へちまのつるは、のびるのをやめたのです。
「なんということだ。わらじが一足たりないばかりに!」
イヌ飼いがくやしがっていると、後からついてきたイヌが、イヌ飼いの頭を越えて、ピョンと天にとびあがったのです。
そして、
「それ、だんなさま!」
イヌはしっぽをたらしてくれました。
「ありがたい」
イヌ飼いは、イヌのしっぽをつかむと、天に飛び上がりました。
そして天に飛び上がったイヌ飼いは彦星(ひこぼし)に、嫁の天女は織り姫(おりひめ)になったということです。
おしまい
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