きょうの日本昔話
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7月25日の日本の昔話

山の中のネコの家

山の中のネコの家

 むかしむかし、あるネコ好きのおばあさんが、一匹の三毛ネコを手に入れました。
 ネコは年を取って、しっぽの先が分かれるようになると、化けるというので、おばあさんは三年ごとに区切って飼うことにしました。
 初めの三年間がアッというまに過ぎ、三毛ネコはすっかりおばあさんになつきました。
 そこで、また三年間飼うことにして、自分の子どものようにかわいがりました。
 六年たっても、まだしっぽの先が分かれていないので、もう三年間飼うことにしました。
 九年も過ぎると、さすがにネコも元気がなくなり、しっぽの先が分かれはじめます。
 そこで、おばあさんもやっとあきらめ、ネコを手ばなすことにしました。
「ようがんばった。困ったことがあれば、いつでももどっておいで」
 おばあさんは、ネコのために赤飯をたいて食べさせ、にぼしのつつみを首にかけてやりました。
 家を出たネコは、名ごりおしそうに何度もふり返っていましたが、やがて姿を消しました。
 それからというもの、おばあさんは、さみしくてしかたがありません。
 別れたネコのことを思うと、新しいネコを飼う気がおきません。
 何年か過ぎたころ、おばあさんは一人で、お遍路(おへんろ→空海という、有名なお坊さんが修行した、四国の八十八箇所を巡る旅)の旅に出ました。
 ところがある日、山でまよってしまい、帰り道がわからなくなったのです。
 行けども行けども、深い森で、ついに道もなくなりました。
 そのうちに、あたりがだんだん暗くなり、動くこともできません。
(こまったことになった)
 おばあさんは、どっとつかれが出て、おなかがすいてきました。
 でも、食べるものはありません。
(このまま、ここでのたれ死にするのか)
 そう思うと、くやしいやら、なさけないやら。
 だからといって、いまさらジタバタしても始まりません。
 おばあさんはあきらめ、ドカッと腰をおろしました。
 するとその時、向こうに小さな明かりが見えたのです。
(こんな山の中に、どうして家が)
 ふしぎに思いましたが、とにかく明かりの方へ行くことにしました。
 近づいて行くと、一人の女の人が、風呂場のかまどにまきをくべています。
 おばあさんは、その女のそばへ行き、
「道にまよって困っている。今夜ひと晩泊めてもらえぬか」
と、いいました。
 女は顔をあげたとたん、うれしそうにさけびます。
「あら、まあ! これは、なつかしい。おばあさん。わたしは、おばあさんの家にいた三毛ネコです」
「なに、おまえが、あの三毛ネコだって」
 おばあさんが、よくよく女の顔を見たら、なんと、自分のかわいがっていたネコではありませんか。
「ほんとだ。どこへ行ったのかと心配していたが、無事でなによりじゃ。ところで、この家にはだれが住んでいる?」
 おばあさんがたずねたら、ネコは急にまじめな顔になり、
「ここは、恐ろしいネコの家で、年をとってしっぽの先が分かれるようになると、みんなここへやってくるのです。どのネコも化けることができ、人間を見つけると、すぐに食い殺してしまいます。せっかく会えたのにざんねんですが、みんながもどらないうちに、早く逃げてください」
と、言いました。
「なんと・・・」
 おばあさんは、青くなってふるえだしました。
「でも、おばあさんはわたしをとてもかわいがってくれました。だから、なんとか助けたいのです。わたしが案内しますから、ついてきてください」
 そう言っているうちにも、
「ニャーオン、ニャーオン」
と、ぶきみなネコの鳴き声が近づいてきました。
「ささっ、急いで!」
 ネコはおばあさんの手をとると、鳴き声とは反対の方へかけだします。
 しばらく行くと、大きな竹やぶの前に出ました。
 すると、ネコが立ちどまって言いました。
「この竹やぶをくぐると、すぐ向こうに道があります。その道をおりて行けば、下の村へ出られます」
「ありがとう」
 おばあさんはお礼を言って、竹やぶにとびこみました。
 竹やぶの向こうに道があって、おばあさんは無事に下の村までたどりつくことができたそうです。

おしまい

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