8月11日の日本の昔話
ねじくれもち
岡山県の民話
むかしむかし、ある山寺に、一人の和尚さんと二人の小僧さんがいました。
二人の小僧さんはとても働き者で、毎日せっせと掃除やお使いをするのですが、反対に和尚さんはとてもなまけ者で、いつもゴロゴロしているのです。
ある夏の事、和尚さんは寝転がったままで行儀悪く、足で木魚をポクポクと叩きながら、あくび交じりに言いました。
「あーあー、まだ夏か。早く、正月が来んかのう。もちが食いたいのう」
さて、いよいよ大みそかになりました。
この山寺でも、おもちをつく事になったので、小僧さんたちは朝から準備に大いそがしです。
ところが和尚さんは、もちをたらふく食べる夢を見ながら、まだぐーぐーと寝ていました。
そして昼過ぎになり、小僧さんたちがようやく百八個のおもちをつきあげて一休みしていると、寝ていた和尚さんがようやく起き出して、
「おお、もちじゃ、もちじゃ。夢にまで見たもちじゃ」
と、つきたてのおもちをムシャムシャと食べ始めたのです。
やがて一休みを終えた小僧さんたちが、つきたてのおもちを仏さまにお供えしようと帰ってきたのですが、なんと和尚さんはおもちを全部食べてしまい、手に持っているのが最後のおもちだったのです。
「おっ、和尚さま、そのおもちは、お正月に仏さまへお供えするおもちでございます。先に召し上がっては、仏さまの罰があたりますよ」
しかし和尚さんは、
「馬鹿馬鹿しい。
何が、仏の罰じゃ。
せっかくのつきたてのもちを、すぐに食べんでどうする。
仏さまにお供えしても、もちが固くなるだけじゃ」
と、最後の一つを、パクリと口へ放り込んだのです。
するとその途端、不思議な事が起こりました。
何と和尚さんの口が、みるみるうちにねじ曲がってしまったのです。
「しっ、しまった! 仏さまの罰が、あたってしもうた!」
和尚さんはあわてておもちをつきなおして仏さまにおもちをお供えしましたが、和尚さんのねじ曲がった口は死ぬまで治らなかったそうです。
それ以来、仏さまにお供えする物を先に食べてしまうと、口がねじ曲がると言われるようになりました。
おしまい
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