8月21日の日本の昔話
お月さまが見ているよ
岐阜県の民話
むかしむかし、あるところに、お父さんと男の子が二人で暮らしていました。
お母さんが亡くなったので、お父さんは一人で男の子を育てているのです。
お父さんは男の子をとても可愛がり、山へ仕事に行く時も、町へ出かける時も、いつも男の子を連れて行きました。
さて、ある月夜の晩の事です。
町へお使いに行っての帰り道、お父さんがふと横の畑を見ると、おいしそうなカボチャが顔を出していました。
お父さんはそのカボチャが食べたくなり、男の子に言いました。
「おい、誰か見ている者がいたら、すぐに知らせろよ。お父さんが、今からカボチャを取ってきてやるからな」
「うん。わかった」
男の子が返事をすると、お父さんは畑の中に入って行きました。
するとそのとたん、男の子が言いました。
「だめ! お父さん、見ているよ」
「えっ!」
お父さんはびっくりして、畑の中にしゃがみ込みました。
でも周りには、人のいる様子がありません。
お父さんは畑から立ちあがって、男の子に言いました。
「何を言っているんだ? 誰も、見ていないじゃないか」
すると男の子が、空を指差して言いました。
「ほら、お月さまが見ているよ」
お父さんが空を見上げると、大きな満月が二人を照らしています。
「そうか、なるほど。確かに、お月さまが見ているよな。・・・ありがとよ、お月さま」
お父さんはカボチャを盗むのをやめると、男の子と手をつないで帰りました。
おしまい
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