9月6日の日本の昔話
カニの餅つき
むかしむかし、とても天気のよい日のことです。
「カニさん、カニさん。いいお天気だから、いっしょに田んぼに行かないか?」
と、サルが呼びにきました。
「田んぼに、なにしに行くの?」
「もち米の落ち穂(ほ)を拾いにさ。たくさん集めて、もちをついて、ふたりでドッサリと食ベようよ。つきたてのもちはおいしいぞ」
「わあ、いいなあ。いこう、いこう」
「じゃあ、カニさんは、このカゴをしょいな。ぼくは、このカゴだ」
サルとカニは、カゴを背負って田んぼへ急ぎました。
カゴの大きさは同じでしたが、カニのカゴには穴があいていました。
サルが、こっそりやぶいておいたのです。
田んぼにつきました。
カニは、あっちこっち走り回って落ち穂を拾い、カゴにポイポイ投げこみました。
けれども、底の穴からポロポロこぼれ落ちてしまいます。
それをサルはすばやく拾って、自分のカゴにみんな入れてしまいました。
サルのカゴがいっぱいになったころ、
「おーい、カニさん。きみは、たくさん拾ったかい?」
と、聞きました。
カニは、ハサミをカゴにつっこんでみましたが、少ししかありません。
「あれ? まだたまっていないよ」
と、悲しそうに答えました。
「だめだなあ、きみは。ぼくなんか、こんなにいっぱいに拾ったんだぞ!」
と、サルはおこった声でいいました。
「・・・ごめん」
「しょうがない。おそくなるからもう帰ろう。きみは、なまけたバツにどこかへ行って、臼(うす)ときねをかりておいで」
と、いいつけました。
カニは、トボトボとサルの後ろについて帰りました。
あちこちまわって、重い臼ときねを、ようやくかりてきました。
それから、ペッタンペッタン、もちつきが始まりました。
やがて、やわらかくておいしそうなもちができあがりました。
するとサルは、もちを全部かかえて、カキの木にスルスルスルッとのぼってしまいました。
そして、ひとりでパクパク食ベはじめたのです。
「サルさん、ずるいじゃないか」
「ほしけりゃ、ここまで登っておいで」
サルは、できたてのもちをちぎっては、カニに見せびらかしてうまそうに食ベます。
「一つでいいから、くれないか」
「ほしけりゃ、ここまでのぼっておいで」
「のぼれないから、投げておくれ」
「のぼっておいで。ここまでおいで」
カニは、くやしくてたまりません。
けれども、木のぼりができません。
そのうち、カニはふと思いついたことがありましたので、わざと聞こえるような声でつぶやきました。
「ぼくんちのおじいさんたちは、もちは、枯れ枝にかけて食ベるとずっとおいしくなるっていってたけどなあ」
すると、人まねが好きなサルは、かかえていたもちのかたまりを、そばの枯れ枝にヒョイとかけました。
その重みで、枝はポッキリおれて、もちといっしょにドシーンと、落ちてしまいました。
かけよったカニは、ハサミでもちを持ちあげると、自分の穴へ入ってしまいます。
あわてて木から飛びおりたサルが、穴の入り口にかけつけました。
「ねえ、一つでいいからくれないか?」
「ほしけりゃ、ここまで入っておいで」
「入れないから、投げておくれ」
「入っておいで。ここまでおいで」
と、カニがからかいました。
サルは、とうとうおこりだして、
「穴の中に、おならをしてやるぞ」
と、おしりをそちらに向けました。
するとカニは、ハサミでサルのおしりの毛をむしりました。
「痛いっ。いててててっ!」
サルは、飛びあがって逃げていきました。
それから、サルのおしりは毛がなくなって赤くなりました。
そして、カニのハサミには、毛がモジャモジャとくっついてしまいました。
おしまい
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