9月11日の日本の昔話
白米城
むかしむかし、山の上に小さなお城がありました。
とつぜん、となりの国から攻められているさいちゅうです。
お城の殿さまは、
(こちらもなんぎじゃが、となりの国の軍勢(ぐんぜい)も、ながい城攻めで、さぞつかれておろう。いまひといきがんばれば、攻め手もあきらめて、かこみをとくやもしれぬ)
と、思っていたところヘ、ひとりの家来がかけつけてきて言いました。
「お殿さま、たいヘんでございます。お城の水が、なくなってしまいました」
「なに、水がない!」
知らせをきいて殿さまは、サッと顔色をかえました。
「米のたくわえは十分なのじゃが、水がなくては、どうにもならん。いよいよ、おしまいか」
そばの大将のひとりがいいました。
「お殿さま。このうえは、みなみな討死(うちじに)と覚悟(かくご)をきめ、すぐさま、敵の中ヘうってでることにいたしましょう」
「・・・それしか、あるまい」
殿さまのゆるしをうけた大将が、さいごの合戦を味方の兵に知らせようと、本丸(ほんまる→城の中心)から下ヘおりてきたとき、百姓(ひゃくしょう→詳細)あがりのウマひきの男が、ヒョコリとあらわれて、
「だんなさま。死ぬこた、いつだってできますだよ。それよりも、わしに考えがありますで」
と、なにかを大将の耳にささやきました。
すると大将は、
「よし、ものはためしということもある。みなのもの、城にある米をのこらず集めよ」
城じゅうから集めた米が、のこらずウマを洗う大きなたらいの中に入れられました。
白い米の入った大きなたらいを、城の中から持ちだすと、そとにはウマが何匹も待っています。
そこは、南をむいた日あたりのいいところで、敵の陣地(じんち)からは、いちばんよく見えるところです。
そして、ウマの世話をする家来たちが、たらいの中から、手おけで白米をすくうと、ザーッ、ザーッと、ウマの背中にも横っ腹にも尻にもかけて、ウマを洗うふりをしました。
このようすを遠くから見ていた敵は、おどろいたのなんの。
「水がなくなって、もうそろそろ降参(こうさん)してくると思っておった。それなのに、あのようにおしげもなく水をつかってウマを洗うとは。こちらのたくわえも、のこりわずか。・・・しかたない、ひきあげよう」
敵は自分たちの国ヘ、ひきあげていったそうです。
敵の陣地から見ると、ウマにふりかける米がお日さまにキラキラひかって、ちょうど水に見えたのです。
このことがあってから、だれいうことなく、この小さな山城のことを、白米城とよぶことになったということです。
おしまい
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