10月12日の日本の昔話
タニシ長者(ちょうじゃ→詳細)
むかしむかし、貧乏なお百姓(ひゃくしょう→詳細)さん夫婦がいました。
子どもが生まれないので、さびしくてたまりません。
「神さま、どうぞ子どもをさずけてください。どんな小さい、タニシ(→詳細)の子でもいいんです」
ふたりで毎日お願いしました。
するとまもなく、あかんぼうが生まれました。
かたつむりみたいな、タニシです。
「ほんとうに小さい、タニシの子だ」
「でも、神さまがくださったんですよ」
お百姓のおとうさんとおかあさんは喜んで、大事に育てました。
タニシの子は、何年たっても大きくなりません。
そのうちに、おとうさんとおかあさんは年寄りになりました。
ある日、おとうさんはつくったお米を俵(たわら)につめて、ウマにのせました。
「ああ、重いな、よいこらしょ」
そのとき、頭の上で声がしました。
「おとうさん、その俵、村のお金持ちの所へ運ぶんでしょう」
おとうさんは、ビックリしてあたりを見回しましたが、屋根の下のたなにのせてやったタニシが、日なたぼっこをしているだけです。
「だれもいない。なにかの聞きまちがいだな」
そう思って、おとうさんはまた、俵をつんでいました。
「おとうさん、ぼくが俵を運んでいくよ」
頭の上で、さっきと同じ声がしました。
見回しても、タニシの子しかいません。
「? ・・・もしかして、おまえか?」
「はい、おとうさん」
なんと、タニシがしゃべったのです。
ビックリしたおとうさんは、おかあさんを呼びにいきました。
「ねえ、おとうさん、おかあさん。ぼく、うまは引いていけないから、俵の上にのせてよ。ぼくが届けてあげるから」
また、タニシがいいました。
「なんてふしぎなんでしょう。きっと、神さまがくださった子どもだからですよ」
「それなら、お使いもできるかもしれないな」
そういって、おとうさんは三俵積んだ米俵の上に、タニシをのせました。
「じゃ、おとうさん、おかあさん、いってきます」
「よく気をつけておいでよ」
タニシの子がかけ声をかけると、ウマは歩きだしました。
パカパカパカパカ。
細い田んぼ道でも、ズンズンと、ウマを歩かせます。
曲がる道も、タニシの子はちゃんと知っています。
じょうずに回らせて、ドンドン進んでいきました。
やがて、お金持ちの大きな家につきました。
「おや? ウマが、ひとりでお米を運んできたよ」
庭にいた人たちが、目を丸くしました。
「お米を届けにきました。あの、おろして」
俵の間から、タニシがいったので、みんなは飛びあがっておどろきました。
「タニシが、お米を運んできたよ!」
その声を聞いて、お金持ちも出てきました。
見ると、タニシの子はみんなにさしずして、俵を物置きへ運ばせています。
それが終わると、お金持ちに大人のようにきちんとあいさつをしました。
「小さなタニシだが、なんてかしこい若者だろう」
感心したお金持ちは、娘のおむこさんにきてもらいました。
お嫁さんになったお金持ちの娘は、とてもやさしい人でした。
貧乏なタニシのおとうさんとおかあさんにも、とてもしんせつにしてあげました。
ある日、タニシのおとうさんたちの家へ、ふたりで出かけました。
途中に、神社があります。
「わたし、ちょっとお参りをしていくわ」
お参りして道までくると、おむこさんのタニシがいません。
「あなた、どこへ行ってしまったの?」
泣きながらさがしていると、りっぱな男の人がきました。
「泣かなくてもいいよ。あんたが神さまにお参りしてくれたので、人間になれました」
「人間に。うれしいわ!」
ふたりは喜んで、しあわせに暮らしました。
おしまい
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