11月9日の日本の昔話
はな垂れこぞう
むかしむかし、ひとりのおじいさんがいました。
おじいさんは毎日、山へたきぎ取りに出かけました。
たきぎを売って、暮らしをたてていたからです。
ある日のことです。
おじいさんが、
「たきぎ。たきぎ。たきぎは、いらんかのう」
と、町のすみずみまで大声をあげて歩きましたが、たきぎは少しも売れませんでした。
おじいさんは疲れはてて、橋の上にすわりこみます。
歩き疲れて、もう、家までたきぎを持って帰る力も出ません。
「売れない物なら、川の神さまにさしあげよう」
おじいさんは、たきぎを一たばずつつかんで、川へ落としました。
「神さま。つまらぬ物ですが取ってくだされ」
ポイポイポイッと、背負ってきたたきぎを、すっかり川へ投げこみました。
そして、トボトボと帰ろうとすると、川の中から美しい女の人が現れました。
女の人は、かわいい小さな子どもをだいています。
「わたしは、川の神さまの使いです。川の神さまは、たきぎをいただいて、たいへんお喜びです。お礼に、この子をさしあげましょう」
「お礼だなんて」
おじいさんは、あわてて手を振りましたが、
「この子は、鼻たれ小僧と言って、頼めばなんでもきいてくれるのです」
「ほんとうですか?」
「そのかわり、毎日ごちそうにエビをさしあげてください。いいですか、毎日ですよ」
女の人は、そういって消えました。
おじいさんは、鼻たれ小僧をかかえて家へもどりました。
家へ帰ると、神だなの横に置いて、たいせつに育てました。
女の人がいったことは、うそではありませんでした。
「お米が、ほしい」
と、いえば、鼻たれ小僧は、鼻をかむときのように、ツンツンと音をたてたかと思うと、あっというまにお米を出してくれるのです。
お金がほしい。
新しい家がほしい。
大きな蔵(くら)がほしい。
おじいさんが頼めば、そのたびに、ツンツン、ツンツン、音をたてて願いを聞いてくれるのです。
一ヶ月もたつと、おじいさんは村一番の大金持ちになっていました。
だから、山へたきぎを取りにいかなくてもいいのです。
ただ毎日、町へいって、鼻たれ小僧に食ベさせるエビを買うことだけが、仕事になりました。
でもおじいさんは、そのうちに、それもめんどうになってきました。
そこで鼻たれ小僧に、
「もう頼むことがなくなったから、川の神さまの所へ帰っておくれ」
と、いってしまったのです。
すると、どうでしょう。
ズーズーと、鼻をすするような音がしたかと思うと、りっぱな家も蔵も、なにもかも消えてしまいました。
あとには、むかしのままのみすぼらしい家が残りました。
「鼻たれ小僧、待っておくれ」
おじいさんは、あわてて追いかけましたが、もう、どこにも姿は見えませんでした。
おしまい
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