12月26日の日本の昔話
モグラの嫁入り
滋賀県の民話
むかしむかし、モグラの夫婦に、可愛い女の子が生まれました。
モグラのお父さんは、その可愛い子どもを見て言いました。
「こんないい子を、モグラなんかの嫁にやるのはもったいない。
出来る事なら、この世で一番えらいお婿さんを探してやろう」
それを聞いたモグラのお母さんも、お父さんに賛成しました。
「そうですね。
この子がお嫁に行くのは、一番えらいお婿さんじゃないと。
・・・でも、誰が一番えらいのかしら?」
「そうだな。この世で一番えらいのは、やはりおてんとうさまだろう」
「そうですね。では、おてんとうさまのところへ、嫁にやりましょう」
そこでモグラの夫婦は、おてんとうさまの所へ頼みに行きました。
「おてんとうさま、おてんとうさま。
わたしたちに、とても器量よしで利口な娘が生まれました。
どうか娘を、一番えらいおてんとうさまのお嫁にもらってください」
すると、おてんとうさまが言いました。
「それはうれしいが、だが、わたしは一番えらくはないよ。
さすがのわたしでも、雲が来れば隠されてしまうんだ。
だからわたしよりもえらい、雲にもらってもらえばいいぞ」
そこで夫婦は、雲の所へ行ってお願いしました。
「雲さま、雲さま。
わたしたちの所に、とても器量よしで利口な娘が生まれた。
どうか娘を、一番えらい雲さまのお嫁にもらってください」
すると、雲が言いました。
「それはうれしいが、だが、わたしは一番えらくはないよ。
さすがのわたしでも、風が吹けば吹き飛ばされてしまうんだ。
だからわたしよりもえらい、風にもらってもらえばいいぞ」
そこで夫婦は、風の所へ行ってお願いしました。
「風さま、風さま。
わたしたちの所に、とても器量よしで利口な娘が生まれた。
どうか娘を、一番えらい風さまのお嫁にもらってください」
すると、風が言いました。
「それはうれしいが、だが、わたしは一番えらくはないよ。
さすがのわたしでも、土手を吹き飛ばす事は出来ないんだ。
だからわたしよりもえらい、土手にもらってもらえばいいぞ」
そこで夫婦は、土手の所へ行ってお願いしました。
「土手さま、土手さま。
わたしたちの所に、とても器量よしで利口な娘が生まれた。
どうか娘を、一番えらい土手さまのお嫁にもらってください」
すると、土手が言いました。
「それはうれしいが、だが、わたしは一番えらくはないよ。
さすがのわたしでも、お前たちモグラにくずされてしまうんだ。
だからわたしよりもえらい、モグラのお嫁になった方がいいのではないのか?」
「そうか、一番えらいのは、おてんとうさまでも、雲さまでも、風さまでも、土手さまでもなく、我々モグラだったのか。
それでは娘は、この世で一番えらい、モグラのお嫁にするとしよう」
こうしてモグラの夫婦は、やがて大きくなった娘をモグラのお嫁さんにしたのでした。
おしまい
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