1月22日の百物語
じゃあじゃ山の大蛇
兵庫県の民話
むかしむかし、じゃあじゃ山というところに、大きな大蛇が住んでいました。
その大蛇を見ると恐ろしいたたりがあるというので、誰も怖がって山へは行きません。
そんなある日、力自慢のじん太という若者が、
「大蛇なんぞ、おらが退治してやる」
と、一人で山へ出かけたのです。
そしてじん太は山で一仕事をすると、大胆にも大の字になってグーグーと昼寝を始めました。
しばらくたって、じん太がふと目を覚ますと、何とじん太が昼寝をしていたすぐ横で木よりも太い大蛇が、
「ヒュー、ヒュー」
と、いびきかいて眠っていたのです。
(うへぇー。何て、でかさだ!)
さすがのじん太も腰を抜かすほどびっくりしましたが、いつも力自慢をしているので逃げるわけにはいきません。
そこで気を取り直して大蛇に近づくと、持っていたくわで大蛇の頭を、
ガツン!
と、殴りつけたのです。
「!!!」
いい気持ちで昼寝をしていた大蛇は、びっくりしてはね起きると、まっ赤な口を大きく開いて、じん太に噛みつこうとしました。
けれどじん太はくわで大蛇の頭を何度も何度も叩いて、ついに大蛇を倒したのです。
「ほうー。大蛇を退治するなんて、大したものだ」
村人たちは感心して、じん太をほめましたが、大蛇のたたりがあると恐いので、やっぱり山には誰も近づきませんでした。
ある日の事、じん太のところに大女がやって来ました。
「突然で失礼ですが、わたしは亭主を殺された仇が、どうしても討ちたいのです。
何でもお前さんは大変な力持ちで、すもうが強いと聞きます。
仇討ちのために、ひとつすもうを教えてくれませんか?」
大女が何度も何度も頭を下げるので、じん太はその大女とすもうをする事になりました。
「はっけよい。のこった!」
大女はじん太と組み合ったとたん、口から蛇の様な細長い舌をペロペロと出して言いました。
「ああ、これでやっと、亭主の仇が討てる」
「なに!」
その言葉に、じん太がびっくりしていると、大女は大蛇に変身して、太い胴体でじん太の体をギリギリと締め付けました。
そのすごい力に、じん太の体中の骨がミシミシと音をたてます。
「うわぁー! お前はあの、大蛇の嫁さんか!」
「そう。わたしは昼寝をしていたところを殺された、亭主の妻です」
そう言ってなおも締め付ける大蛇に、じん太は近くにあったてんびん棒をつかむと、無我夢中で殴りつけました。
そして何度も何度も殴りつけて、ついに大蛇の嫁さんも殴り殺したのです。
さて、この日から山に入っても大蛇が現れる事はありませんでしたが、じん太はその時のケガがもとで、何日も何日も苦しんだ末に死んでしまったそうです。
おしまい