6月19日の百物語
墓を壊したたたり
岡山県の民話
むかしむかし、備中の国(びっちゅうのくに→岡山県)に、草のおいしげった広い土地がありました。
ここを耕せば良い田んぼが出来るので、代官の命令で大勢の人たちが土地を耕し始めました。
そして何日もかかって、やっと半分ほどを耕した時、草むらの中から大むかしのお墓らしい小さな山が見つかりました。
「これは、どうしたものだろう?」
「墓を壊すと、ひどいたたりがあるというぞ」
そこで村人たちは、代官のところへ相談に行きました。
すると代官は、
「死んだ人間より、生きている人間の方が大事だ。構わないから、墓を壊してしまえ!」
と、言うのです。
「まあ、お代官さまがそう言われるのでしたら」
そこでみんなは、お墓らしい山を崩して耕しました。
ところが不思議な事に、次の日になると崩した小さな山がすっかり元通りになっているのです。
「これはきっと、墓の中にいるご先祖さまの仕業に違いない」
「もう、山を壊すのはやめよう」
人々はそう言いましたが、代官は承知しません。
「なさけない奴らめ。お前たちが出来ないのなら、わしが壊してやろう」
代官は家来たちを連れてきて、みんなで山を崩して土を掘り起こしました。
すると土の中から、古いけれど大きくて立派なつぼが出てきました。
代官はそれを見て、ニヤリと笑いました。
「なるほど。これは墓ではなく、誰かが財宝を埋めた跡に違いない。しめしめ、中の宝はわしの物だ」
代官は家来に命じて、つぼのふたを開けさせました。
そのとたん、つぼの中から黒い煙が勢い良く吹き出して、
ゴロゴロゴロ!
と、かみなりの様な音が響き渡りました。
代官も家来もびっくりして、ガタガタと震えました。
周りにいた村人たちは、大慌てで逃げて行きました。
「いかん。わしらも逃げるぞ!」
震えていた代官たちも、その場から逃げ出そうとしましたが、今度は、
ドカーン!
と、いう音とともに、つぼの中からまっ赤な炎が吹き上がって、代官や家来たちをあっという間に焼き殺してしまったのです。
遠くからこれを見ていた村人たちは、
「やっぱり墓を、壊してはいけないんだ」
と、言って、二度とそこへは近寄らなくなりました。
そして新しい代官が来ても、そこを耕す事はなかったそうです。
おしまい