9月16日の百物語
龍の枕
三重県の民話
むかしむかし、大杉谷(おおすぎだに→三重県多気郡大台町の宮川上流、吉野熊野国立公園内にある渓谷 )の深山という所に、竜神が住んでいました。
ある嵐の夜、大雨に川の水があふれて、大きな丸太が流されて来ました。
翌日、それを見つけた村人がその丸太を家まで運んで、
「薪にしよう」
と、オノで丸太を割ろうとしたのですが、その途端、
ドーーン!!
と、村人は体が爆発したかの様な衝撃を受けて、そのままばたりと倒れてしまったのです。
それを見た家族があわてて介抱しますが、倒れた村人は目を覚ましません。
そこへちょうど修業中の山伏(やまぶし)が通りかかり、
「よければ、わたしが原因を調べてみましょう」
と、倒れた村人の枕元に座って、何やら呪文を唱え始めました。
やがて山伏は呪文を唱え終わると、心配する家族に言いました。
「あの丸太は竜神さまの枕で、魂が宿っています。
薪にされそうになったので、怒られたのです。
大切にまつれば、機嫌を治してくださるでしょう」
そこで家族が、さっそく丸太をまつると、倒れていた村人の顔色がみるみる良くなって、やがて元気を取り戻したのです。
その後、この丸太は『龍の枕』として、多くの村人たちがお参りする様になったそうです。
おしまい