10月23日の百物語
盗人宮(ぬすっとみや)
長野県の民話
むかしむかし、広い田んぼを持った百姓家がありました。
そこの家では夕顔やウリを作っていますが、ある年からこの畑に泥棒が入る様になり、夜になるとせっかく育った夕顔を盗んでいくのです。
それがあまりにも続くので、たまりかねた主人は寝ずの番をする事にしました。
主人が物陰に隠れていると、どこからか一つの黒い影が現れました。
「こらしめてやる!」
主人は手に持った棒を、泥棒の頭にめがけて振り下ろしました。
「こらっ! 人の畑の物を盗む奴は、こうしてやる!」
ところが打ちどころが悪かったのか、泥棒はその場に倒れて、そのまま死んでしまったのです。
死んだ泥棒は村人たちによって葬られたのですが、それからというもの百姓の畑で作った夕顔を切ると、まるで血の様に赤い汁が出る様になったのです。
「これは、あの死んだ盗人のたたりだろうか?」
怖くなった主人は夕顔もウリも作る事をやめて、男を葬ったあたりに小さなお宮を建ててやりました。
いつしかこのお宮は、『盗人宮(ぬすっとみや)』と名づけられました。
今でも長野県の大町市には、盗人宮と呼ばれる小さな石の祠(ほこら)が残っているそうです。
おしまい