11月16日の百物語
秋芳洞の鬼女
山口県の民話
むかしむかし、 山口県美祢市の秋芳洞(あきよしどう)には、人がめったに入らず、もし入れば二度と帰って来られないと言われていました。
ある日の事、この村を通りかかった修験者(しゅげんしゃ)が、
「それなら、わたしがその奥を見極めてやろう」
と、松明(たいまつ)を手に秋芳洞へ入って行きました。
すると、どこからともなく一人の鬼女(おにおんな)が現れて、驚く修験者にこう言ったのです。
「この奥は無限(むげん)であり、あの世へと通じている。
生身のお前を通すわけにはいかんし、この事を知ったお前を生かして返すわけにはいかん。
だが、お前は仏につかえる者。
今度ばかりは生きて返してやるが、この事を一言でも口にしたら、命はないと思え」
村に逃げ帰った修験者は、村人たちに中の様子を聞かれましたが、修験者は鬼女との約束があるので固く口を閉ざしていました。
しかし、あまりにもしつこく聞かれるので、とうとう一部始終を話してしまったのです。
「・・・その様なわけだから、この事は聞かなかった事にしてほしい」
そう言い終えたとたん、修験者はその場に倒れて、そのまま鬼女の言葉通り、あの世へと旅立ってしまったのです。
おしまい