11月27日の百物語
髪の長い娘とナマズ
群馬県の民話
むかしむかし、ある村に、平次郎(へいじろう)というお百姓(ひゃくしょう)が住んでいました。
平次郎には二十二歳になる娘がいましたが、なかなか嫁のもらい手がなくて困っています。
それというのも娘は子どもの頃から髪を伸ばし続けて、地面にずるずるとひきずるほどだったからです。
「なあ娘や、いいかげん髪を切らないと、一生嫁のもらい手がないぞ」
「いいさ。髪を切るぐらいなら、嫁にいかねえ。死んでも、髪は切らねえ」
そんなある日、娘は病気になって死んでしまいました。
娘は死んでも髪は切らないと言っていたので、平次郎は長い髪のままで娘をお墓に埋めました。
それからしばらくして家族や親戚(しんせき)たちが集まったので、みんなで娘のお墓参りに行きました。
みんながお墓の前で手を合わせていると、突然お墓がグラグラと動きはじめたのです。
みんながビックリしてその場から離れると、お墓はズブズブと土の中に沈んでいき、深さが十メートル、周囲が三十メートルほどもある大きな穴が出来ました。
やがてこの穴の底から水が湧き出して、穴は大きな池になりました。
それから何年かすると、この池から長いひげのあるナマズがたくさんとれる様になりました。
このナマズは、髪の長い娘の生まれ変わりだと言われています。
おしまい