11月30日の百物語
ホトトギスの兄弟
鹿児島県 薩摩郡の民話
むかしむかし、あるところに、ホトトギスの兄弟が住んでいました。
弟は生まれつき体が弱かったので、優しい兄が毎日毎日山の中をかけずりまわっては、栄養のあるヤマイモを掘って弟に食べさせていました。
でも弟には、兄の苦労がわかりません。
「動けない自分でも、これだけうまい物を食べているのだから、自由に動ける兄さんは、さぞやうまい物を食べておるんだろう」
弟は、いつもそう思っていました。
ある年の事、兄は働き過ぎて病気になってしまいました。
それでも弟の為にと、ヤマイモ掘りだけは休みませんでした。
その為に病気はますます重くなり、食べ物を取りに行く以外はほとんど動けなくなってしまったのです。
そんなある日、兄は病気でついに動けなくなり、一日だけヤマイモ掘りを休む事にしました。
いつもの時間になっても兄がヤマイモを持ってきてくれないので、弟は兄の部屋をのぞいてみました。
すると兄はお腹を押さえて、苦しそうにうんうんとうなっています。
それを見て、弟は思いました。
「兄さんのやつ、うまい物を食い過ぎて、動けなくなったのだな。ひどい兄さんだ! 弟にご飯をくれないで、一人でうまい物を食うなんて!」
勘違いで怒った弟は病気で動けない兄を殺してしまうと、兄のお腹を切り裂きました。
自分よりもいい物を食べていると思っている兄のお腹の中に、どんなごちそうがつまっているのか知りたかったからです。
ところが兄のお腹の中には腐った野菜や死んだ虫など、まずそうな物しか入っていませんでした。
「そうだったのか」
この時、弟は初めて兄のやさしさを知り、泣きながら自分のした事を後悔しました。
そして、自分の悪い心をくやみ、
「本性になった。本性になった」
と、鳴き続けました。
こうしてホトトギスは今でも、
「本性になった。本性になった」
と、鳴いているのです。
おしまい