12月27日の百物語
カッパ岩
宮崎県の民話
むかしむかし、ある川に、一匹のカッパが住んでいました。
ある日の事、子どもたちが大勢集まって、川の中に白い小石を投げ込んでは拾ってくる遊びをしていました。
するとそこへカッパが現れて、子どもたちに言いました。
「楽しそうだな。おれも仲間に入れてくれ」
子どもたちはカッパが人間の尻子玉(しりこだま)を取って食べると聞いていたので、みんないっせいに逃げ出そうとしました。
するとカッパは、串に刺した魚を見せて言いました。
「おれに勝った者には、この魚をやるぞ」
見ると、とてもおいしそうな魚です。
子どもたちはお腹が空いていたので、カッパとの勝負を受けました。
「よし、それなら勝負しよう」
こうしてカッパと子どもたちは勝負を始めましたが、何度やってもカッパには勝てません。
そこで一番大きな子どもが、小石を川の一番深いところに投げて言いました。
「よし、今度はおらが相手になってやる」
子どもたちは、どちらが早く石を拾って来るかを見守っていました。
でもいくら待っても、どちらも水の中からあがって来ませんでした。
この話しを子どもたちから聞いた村人たちは、夜になってもかがり火をたいて子どもを探しましたが、とうとう子どもを見つける事は出来ませんでした。
次の日、村人たちが子どもを探していると、昨日のカッパが姿を現しました。
村人たちはカッパ捕まえると、子どもをどこへやったかと問いただしました。
するとカッパは、ばつが悪そうに言いました。
「子どもの尻があまりにもうまそうだったので、尻子玉を抜いて食っちまった。そしたら子どもはそのまま水に流されて、どこかへ行ってしまった」
「何だと! このカッパめ、叩き殺してやる!」
村人たちがカッパを殴りつけると、カッパは涙を流して謝りました。
「許してください。おれが悪かった。もう、二度としませんから」
それを見た村人たちは、カッパに言いました。
「それでは、二度と子どもの尻子玉は抜かないと約束しろ。川の中にある、あの大きな岩が腐るまでは、決して悪さをしてはならんぞ」
「わかった、約束する。あの岩が腐るまでは、決して悪さはしない」
村人たちは、カッパを許してやりました。
それからというもの、カッパはこの約束を守って悪さをしなくなりました。
それでも時々は、約束した大きな岩に登っては、
「この岩、まだ腐らんのじゃろか」
と、岩を手でなで回しながら言ったそうです。
おしまい