3月1日の小話
目をさます
ひまさえあれば、いねむりばかりしているご亭主がいました。
今日もまた、店先でひなたぼっこをしながら、コックリ、コックリ、気持ちよさそうにいねむりをしておりました。
「あれっ! また、いねむりがはじまったよ。おまえさん、みっともないから、中に入って、おくの部屋でおやすみなさい」
女房が見かねて、店の中から声をかけました。
すると亭主が、目をつぶったまま、手さぐりで、家の中に入って来ようとしています。
女房が、おどろいて、
「おまえさん! 目はちゃんとあけて歩きなされ。物につきあたって、けがをするではありませんか」
と、注意をすると、亭主は、あわてて、
「しーっ! そんな大きな声を出すやつがあるか! せっかくねているのに、目をさましてしまうではないか!」
おしまい
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