3月27日の小話
故郷(こきょう)に錦(にしき)をかざる
何年ぶりかで故郷に帰ることになったこじき(→詳細)が、大きな花のもようのついた新しいござをかぶって、旅立とうとしておりました。
そこに、友だちのこじきがやって来ました。
「おいおい、そんなよそ行きのかっこうをして、どこにいくのだね?」
と、声をかけるので、
「久しぶりで、いなかに帰るのさ」
と、言うと、友だちのこじきが、
「そんな、うすっぺらなござ一まいでは寒かろうよ。おれの着ているこの、こも(わらであんだぶ厚いむしろ)をせんべつにやるから着ていきな」
と、いいながら、着ているこもをぬごうとしました。
すると、旅に出るこじきは、声を強めて、
「じょうだんじゃあない! そんなうすよごれたこもなどをかぶって帰ったんでは、故郷に錦をかざること(成功して故郷に帰ること)には、なりゃあしないさ」
花のもようのついた、新しいござをかぶっても、故郷に錦をかざるとは、とうてい、いえないと思いますがね。
おしまい
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