きょうの江戸小話
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6月6日の小話

ますおとし

ますおとし

 むかしは、よく、ますおとしというやり方で、ネズミを取ったものでございます。
 これは、ますをふせた中にえさを入れ、ふちにつっかいぼうをして、ネズミが入るようにしておきます。
 ネズミがえさを食べに入ると、ぼうがたおれて、ネズミの上にますがかぶって、出られなくなるという、しかけです。
 あるとき。
 ますおとしに、ネズミが一ぴきかかりました。
 尾だけが、ますの外に見えております。
「それっ。ネズミが取れた」
と、いうので、家の者がみんなよってきました。
「ほほう。太いしっぽだ。この太さなら、さぞ、大きなネズミだろう」
と、あるじがいえば、そばから女房が、
「いいえ。いくらしっぽが太いからといって、ネズミが大きいとはかぎりませんよ。この中のネズミは、小さいですよ」
と、いえば、親父も負けじと、
「いや、大きい」
「いや、小さい」
「いーや、大きい」
「いーや、小さい」
と、たいヘんないいあらそいになりました。
 それをきいたネズミが、ますの中からいいました。
「チュウ(中)、チュウ(中)」

おしまい

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