6月14日の小話
商売なかま
お茶売りが町へやってきて、
「新茶はいかがですか。かおりのいい、新茶はいかがですか」
と、声をはりあげると、すぐうしろから、こなをふるう、『ふるい』と、いう道具を売る男が、
「えー、ふるい。ふるい」
声をはりあげて、ついてきます。
「新茶あ、新茶あ」
「ふるーい、ふるーい」
町の人たちは、この売り声に、首をひねりました。
「新茶だか、ふるいお茶だか、さっぱりわからん」
だれもお茶を買いません。
せっかくの新茶がぜんぜん売れないので、お茶売りは、ふるい売りにおこりました。
「おまえが、ふるい、ふるいというもんだから、ちっともうれん。しょうばいのじゃまをするつもりか。もっと、はなれて歩け」
ふるい売りもまけていません。
「おまえの新茶をふるいといっているのではない。ふるい売りが、『ふるい、ふるい』といって、なにが悪い」
と、くってかかりました。
「なんだと、このやろう!」
「なにっ、やるか!」
ふたりは、しょうばいそっちのけで、けんかをはじめました。
すると、
「まてまて、けんかをやめんか」
くず鉄などを買って歩く、ふる金屋がとおりかかって、けんかのわけをききました。
「なるほど、新茶とふるいでは、けんかになるのもむりはない。しかし、おれがなかまに入れば、商売がうまくいくにちがいない」
ふる金屋がいうので、まず、ふるい売りが、
「ふるーい、ふるーい」
その次にふる金屋が、
「ふるかねぇ、ふるかねぇ」
最後に、お茶売りが、
「新茶ぁ、新茶ぁ」
と、いってまわったので、今度は、おたがいによい商売ができました。
おしまい
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