11月16日の小話
大事なお手本
ある町に、鬼瓦(おにがわら→屋根の両はしに取りつける、鬼の顔に似たかざりの瓦 →詳細)を焼いている瓦職人が住んでおりました。
この職人の家から、それほど遠くないところに、一人のむすめさんが住んでいました。
ところが、このむすめさんは、ちょっとした病気がもとで、ポックリ死んでしまったのです。
すると、瓦焼きの職人が、わざわざむすめさんの家まで出かけていって、人一倍悲しそうに、泣き悲しんでおりました。
むすめさんの父親が、ふしぎにおもって、
「どこのお方かはぞんじませんが、どうして、そんなに悲しんでくださるのですか? もしや、娘といい仲だったのでしょうか?」
と、ききますと、瓦焼きの職人は、さもくやしそうに、
「いいえ、じつは、わたしの大事な鬼瓦の手本が、今日からなくなってしまったもので」
おしまい
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