3月9日の日本民話
塩買い大黒
鹿児島県の民話
むかしむかし、薩摩の国(さつまのくに→鹿児島県)で、塩がとても少なくなった年がありました。
川内(せんだい)のあたりは特にひどくて、奉平寺(たいへいじ)というお寺でも、毎日、和尚さんも小僧も、朝から晩まで塩さがしに走り回っていました。
そんなある日、本堂を掃除していた小僧は、どっかりと座っている大黒さんを見ながら、うらめしそうにつぶやきました。
「大黒さんはよかね。塩不足で皆が困っとるちゅうに、のんびりと。だいたいおまんさまは、福を持ってくるのが仕事じゃろうが。それがなんもせんで、ちょこんと座っちょるだけやなかか。そうじゃろ、なあ、なんか言うてみい」
でも相手は木彫りの大黒さんですので、いくら文句を言っても返事をするわけがありません。
「けっ、返事もなかか」
小僧は腹いせに大黒さんを足でけりつけると、出て行きました。
さて次の日、大変なことが起こりました。
大黒さんの姿がどこにもないのです。
お寺のみんなは、あちこちを探しましたが、やっぱりどこにもありません。
「もしかして、泥棒にでもとられたんじゃろか?」
「これだけ探しても見つからんのじゃ。そうかもしれんな」
みんなはとうとう、探すのをあきらめてしまいました。
ところが、それから間もなくの事です。
川内の港に、塩をいっぱいつんだ船がやってきました。
川内の人々は大喜びで迎えましたが、だれが船を頼んだのかわかりません。
そこで船頭に聞いてみると、
「四、五日前に、川内に塩を届けてくれちゅうて、どっさり金をおいていきおった人がおったのです。変わった格好の客でな。大きな袋かついで、頭巾をかぶっとった」
と、首をかしげて答えるのです。
それを聞いた小僧は、びっくりです。
「その格好は、大黒さんにそっくりじゃ。まさかうちの大黒さんが」
あわてて寺にもどった小僧は、またまたびっくりです。
なんと大黒さんが、ちゃんと元の場所に座っているのです。
それだけではありません。
大黒さんの足が砂でよごれており、おまけにその砂が本堂の縁側からずっと続いているのです。
さらによく見ると、大黒さんのかついでいる大きな袋が、前よりも少し小さくなっているのです。
小僧はその場にひれ伏すと、
「大黒さん、この前はすまんことです。そして塩を、ありがとごわした」
と、手をあわせてあやまったそうです。
おしまい
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