5月11日の日本民話
長者になりそこねた欲張り
和歌山県の民話
むかしむかし、ある村に、とても欲張りな男がいました。
その欲張り男がとなりの家から、産み立てのたまごを三つもらいました。
欲張り男はとても喜んで、そのたまごを指でいじりながら考えました。
(さあ、このたまごをヒヨコにかえして、ニワトリに育てよう。
するとそのニワトリが、たまごを産むだろう。
一羽が十個のたまごを産んだとして、あわせて三十個だ。
それをまたヒヨコにかえしてニワトリに育てる。
そうやってどんどんニワトリをふやしたら、今度はそのたまごを町へ売りに行こう。
毎日毎日、荷車にたまごを山のようにつんで町へ売りに行くんだ。
するとお金がどんどんもうかって、おれは村一番の金持ちだ。
うっししし。
さて、金持ちになったら何をしようか?
そうそう、まずはおいしい物をたくさん食べよう。
それから大きな牛を何頭も買うんだ。
牛を育てるためには、たくさんの草がいるから、広い田んぼや畑も買わなくちゃな。
でも、一人で牛を育てたり、田んぼや畑をたがやすことは出来ないから、大勢の人をやとうとしよう。
それには、こんなちっぽけな家じゃ駄目だ。
うーんと広い家をたてなくちゃな。
そうなれば、もうおれは長者さまだ)
欲張り男は、すっかり長者になった気分で、みんなをどうやって働かそうかと考えました。
(まず、なまけ者は許さないぞ。
仕事もしないで遊んでいるやつは、こうやって首をしめて、
『しっかり働かないと、ひねりつぶしてしまうぞ。』
と、おどかしてやろう)
欲張り男は手に持っていた三つのたまごを、思わず握りしめました。
そのとたん、
グシャ!
と、いう音がして、大切なたまごが割れてしまいました。
欲張り男は泣きそうな顔になり、
「しまった。長者さまになりそこなった」
と、言ったそうです。
同じ様なお話しが、イソップ童話にもあります。
→ 乳しぼりの女
おしまい
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