6月7日の日本民話
孝女(こうじょ)いと
福井県の民話
むかしむかし、早瀬(はやせ)に、イトという心のやさしい女の人がいました。
家はとても貧しくて、夫も漁に出て留守がちだったので、イトが魚を売り歩いて姑(しゅうと)と子どもを養っていまし゜た。
あるとき、イトが魚を売り終えて帰ってみると、家の中一面にわらが散らかっています。
「なんだろう、これは?」
不思議に思って、子どもにたずねると、
「うん。おばあちゃんと一緒に遊んだんだよ」
と、答えます。
年老いた姑は、聞き分けのない子どもと同じなのでした。
でもイトは、怒るどころか、
「まあ、それは楽しそうね」
と、自分もわらをまいて遊んだので、姑はとても喜びました。
またある年の冬、姑は急に季節はずれのなすびの吸い物が食べたいと言いだしました。
そこでイトが、近くの寺でもらったなすびのぬかづけを川で洗っていると、みるみるうちに鮮やかな紫の生のなすびになったので、それで吸い物を作る事ができました。
その次の年の冬、今度は嵐で漁ができない時に、姑は魚を食べたいとだだをこねました。
イトが何とかしようと魚を探し歩いていると、一羽のトビが飛んできて、大きな生きた魚を落としていきました。
もちろんイトは喜んでその魚を拾い、姑に食べさせました。
きっと、イトの姑を思う気持ちが、天に届いたのでしょうね。
おしまい
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